研究課題
国際共同研究加速基金(国際共同研究強化(A))
末梢と中枢組織の間には、中枢関門が存在する。本研究では、最先端オミクス技術を有するスイス連邦工科大学分子システム生物学研究所との共同研究によって、トランスポーターの探索・局在解析・基質探索及び生理的役割解明を一挙に達成できる「次世代型トランスポーター解析基盤」を構築し、中枢機能の恒常性維持のために中枢関門がどのような生理的役割を果たしているかを解明することを目的とする。
中枢関門細胞の輸送担体の機能解析を行う上で、効率よく遺伝子導入できる技術は有用である。従来のリポフェクション法は、導入効率が悪く、導入される細胞の割合は、全体の10%以下であった。対照的に、ssPalm脂質を用いたナノ粒子に遺伝子を搭載し導入した場合、95%の細胞に導入することに成功した。各種in vitro系やin vivo系を用いた解析によって、血液クモ膜関門のoat1/slc22a6やoat3/slc22a8は有機アニオンの脳脊髄液からの排出に寄与することが明らかとなった。定量プロテオミクスSWATH法とクロスリンク法を融合させることによって、目的の化合物を輸送する輸送担体を効率よく同定する手法「Proteomics-based Identification of transporter by Crosslinking substrate in Keyhole (PICK)」法を開発した。血液脳関門において有機カチオン性化合物を脳内へ供給輸送する新規輸送担体複合体TM7SF3/LHFPL6を発見し、輸送特性を決定した。論文発表済みである。また、いくつかの輸送担体について、高発現させたin vitro細胞株とその親細胞株(発現させていない)を用いて、基質である化合物に対する輸送速度を計測し、高発現株と親細胞株の差からトランスポーターの輸送活性を求めた。最新の液体クロマトグラフィ接続型質量分析装置を用いて、その細胞株における該当トランスポータータンパク質の存在量を定量した。輸送活性を存在量で割ることによって、1 molあたりの輸送活性を解明した。1 molあたりの輸送活性を、血液脳関門におけるトランスポーターのタンパク質存在量(mol)と統合することによって、in vivo血液脳関門での輸送活性を再構築した。
3: やや遅れている
新型コロナウィルス感染症の流行のため、依然としてスイスへ渡航できていないが、方針を変更して、Web会議等でスイス連邦工科大学の共同研究者と密に連携することや、日本のラボに装置を導入することによって、渡航することなく、計画を前に進めることができた。
新規に探索された輸送担体についてin vitroおよびin vivoでの実験・解析を進め、中枢関門の生理学的役割を解明する方針である。
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