研究概要 |
我々が開発した「全電子混合基底法」は数値局在基底と平面波基底の混合基底を用いて芯電子状態から自由電子状態までのあらゆる電子状態を精度良く記述する第一原理計算手法である。我々はこの手法を密度汎関数理論の枠組みを越えた多体摂動論に基づくGW近似に応用し、スピン偏極した系として、奇数個のアルカリ金属原子からなるクラスターの準粒子エネルギー・スペクトルの全電子計算を行った(J. Chem. Phys. 76, 104104 ; 1-7(2008))。また、GW近似とT-matrix理論により電子間のクーロン相互作用による多重散乱効果を取り扱い、Augerスペクトルを精密に決定することに成功した(Phys. Rev. B 77, 035132 ; 1-7(2008))。さらに、時間依存密度汎関数理論による全電子分子動力学シミュレーションにより、フタロシアニン基を持つSSSlPcに続いて、フェニレン基を持つπ共役デンドリマー(phDG2)の光捕集機能のダイナミックスを調べることにも成功した(J. Phys. Condensed Matter 21, 064217 ; 1-6(2009)。さらに、^7Beの半減期がC_<60>中に内包され極低温に冷やされると1.7%短縮することを理論的に明らかにした(Phys. Rev. B78, 125416 ; 1-7(2008))。また、FePt合金およびそのクラスターの第一原理計算を格子モンテカルロシミュレーションに繋げるマルチスケール・シミュレーションを行った(J. Chem. Phys. 128, 234702 ; 1-5(2008) ; Mater. Trans. 49, 2424-2428(2008))。さらに高分子鎖の線形および非線形弾性挙動をモンテカルロ法で解析した(Macromolecules 41, 4037-4041(2008))。
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