配分額 *注記 |
18,720千円 (直接経費: 14,400千円、間接経費: 4,320千円)
2010年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2009年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2008年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2007年度: 5,590千円 (直接経費: 4,300千円、間接経費: 1,290千円)
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研究概要 |
感染症,慢性疾患を問わず,疾病の流行状況や蔓延状況を迅速かつ正確に把握することはあらゆる疾病対策に必須であるが,従来の,感染症法に基づく感染症発生動向調査(定点サーベイランス),食品衛生法に基づく食中毒の届出,薬事法に基づく医薬品副作用報告制度,根拠法を持たない自主的取組である地域がん登録といったサーベイランスやモニタリングは,その網羅性や正確性の面で限界がある。そこで2010年度までに整備されるレセプトのナショナルデータベースを感染症や慢性疾患等あらゆる疾患のサーベイランスに活用することを目標に,その実現に必要な技術的な課題について研究をすすめた。従来のサーベイランスやモニタリングが医療機関等の自発的な報告に期待する受動的なものであるのに対して,収集されるデータベースを「積極的」に分析し網羅的かつ正確な把握を実現しよう,という目標である。そこに立ちはだかる技術的課題とは,レセプトは医療費の請求書であり,疾病登録を目的としたものではないので収集されるレセプトデータはそのままでは正確かつ網羅的な疾病登録に使えない可能性があり,限界のあるレセプトデータより網羅的かつ正確な有病者数を把握する手法が必要だからである。具体的には, 1)レセプトには疑い病名や保険病名が多数記載され正確性に問題があるのみならず,そうした病名の頻度は傷病の種類ごとに違いがある。それゆえ推計にあたっては対象疾患ごとの疑い病名や保険病名の割合を加味する必要がある, 2)より正確な有病者数の推計のためには,病名のみの正確性に依存するのではなく,使用される薬剤,提供された診療行為等,レセプトならではの病名以外の情報を組み合わせて判断する必要がある。傷病名,薬剤名そして診療行為等を多元的に組み合わせてある病気の正確な有病者を推計するレセプトオントロジーを構築する,そして3)インフルエンザのような急性疾患においては流行開始のタイミングの特定が重要であり,週報ではなく処方日のような日単位のデータより,市町村単位の小地域でどの日時をもって流行開始と判断すべきかを統計的に判断したりGISマッピングする手法を開発した。構築されたナショナルデータベースは2009年4月診療分よりレセプトデータの収集を開始したことより,本研究の総仕上げとして当時関西から流行しだした新型インフルエンザの流行状況を把握するための研究利用を申請する予定であったが,ナショナルデータベースの研究利用の受付が当初予定された最終年度に間にあわなかったため研究期間を1年間延長した。結局,研究利用ガイドラインの個人情報保護制約により市区町村単位,診療開始日単位の提供は認められなかったため,ナショナルデータベース利用は断念せざるをえなかった。しかし熊本県市町村の協力により国保レセプトによるインフルエンザサーベイランスシステムを完成させることができた。
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