研究課題
基盤研究(C)
肝炎肝組織は多くのリンパ球浸潤を伴っており、様々な免疫担当細胞の浸潤が肝蔵で認められる。これらが末梢血リンパ球の遺伝子発現変化として現れている可能性がある。本研究では末梢血液細胞の遺伝子発現の肝病態を反映する指標としての可能性を検討した。まず、25例の健常例と88例のC型慢性肝炎症例の末梢血液の遺伝子発現プロファイルを解析した。健常例とC型慢性肝炎症例の末梢血液の遺伝子発現は大きく異なっており、階層クラスター解析やSupport vector machineを用いた教師付学習法に於いて100%の分類が可能であった。C型慢性肝炎症例の末梢血液では蛋白翻訳、インターフェロン、アポトーシスシグナルの活性化を認め健常者と大きく異なった免疫状態を呈することが明らかとなった。次に、32例のC型肝硬変症例と30例のC型肝硬変肝癌合併症例の末梢血単核球(PBMC)の遺伝子発現を解析した。両群の遺伝子発現も大きく異なっており、肝癌合併症例では、抗原提示、ユビキチンプロテアソーム系、細胞周期、ストレス応答に関わる遺伝子群の発現亢進が認められた。また12例の外科的切除肝癌組織より癌部および非癌部浸潤リンパ球をレーザーキャプチャーマイクロダイセクションにて選択的に回収し遺伝子発現を解析すると、肝癌浸潤リンパ球の遺伝子発現は非癌部浸潤リンパ球に比べ、抗原提示、ユビキチンプロテアソーム系など末梢血液で発現亢進した同様の遺伝子群が発現亢進しており、癌局所の浸潤リンパ球の遺伝子発現情報が末梢血の遺伝子発現変化として反映されることが明らかとなった。以上より末梢血液の遺伝子発現情報により肝局所の免疫状態、病態を解析できる可能性が示唆され、肝病態の診断、治療効果判定に応用できる可能性が示唆された。
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