研究概要 |
溶血性尿毒症症候群(HUS)は,腸管出血性大腸菌から産生される志賀毒素(Stx)が,発症に関与している.HUSに合併する急性脳症(HUS脳症)は死亡率が高く,しかもその病態生理は未だに不明である.HUS脳症の発症機序で,Stxによる大脳血管内皮細胞障害が考慮されているが,グリア細胞(アストロサイト)の役割についての報告は少ない. 本研究で,我々はStxによるヒトアストロサイトの免疫反応について検討した.Stx receptor(Gb3)は,培養ヒトアストロサイトで発現しており,炎症性サイトカイン(特に,IL-1β)により,その発現が増強したことが示された.またSt2刺激により,ケモカイン(IL-8,MCP-1)のmRNA発現増加と産生増加が示され,特にIL-8は,Stx2とIL-1βの同時刺激でさらに発現は増加した. 今回の研究結果から,Stxによるヒトアストロサイトの免疫反応は,ケモカイン産生に関与し,HUS脳症の発症機序に関与する可能性が示された.
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