研究課題
特別研究員奨励費
世界最大の造山帯である中央アジア造山帯は、従来はシベリア地塊と北中国地塊の1回の衝突によって形成された考えられてきたが、最近は微小大陸の多重衝突モデルが提示されている。そこで本研究は、研究が乏しい中国北西部タリム地域に分布する当該造山帯に注目し、地質調査および岩石学的・年代学的解析から衝突プロセスを解析し、中央アジア造山帯の総合的なテクトニクス解明を行う。また関連するインド、スリランカ、南極、アフリカ等の造山帯の研究を並行して行い、広域的な対比を行う。以上の結果から、超大陸形成にともなうプレート収束域のテクトニクスと、非活動的大陸縁辺部でのプレート沈み込み開始のメカニズムを総合的に解明する。
世界最大の大陸であるアジア大陸の形成プロセスを議論する上で、その大部分を占める中央アジア造山帯の形成時代とテクトニクスを理解することは、当該大陸の成長過程のみならず、地球史における超大陸の形成および分裂プロセスの理解につながる。特に本研究では中国北西部のタリム地塊およびその周辺地域の岩石に注目し、パレオテチス海の閉塞にともなう造山運動のテクトニクスの解明をおこなった。また、この造山運動の汎世界的特徴を理解するため、マラウイなどの時代の他地域の岩石の研究も並行して行った。本研究の主な成果として、以下の3点があげられる。1) 北部Altyn Tagh地域の年代分析から、当該地域に広く分布する堆積岩が4.7~4.6億年前の短期間に堆積したことを明らかにした。これはパレオテチス海の一部である北Altyn海の閉塞時期を意味しており、既存のデータと組みわせることにより、パレオテチス海は5~4.2億年前に段階的に閉塞した(つまり大陸が衝突した)ことを意味している。2) 北部Altyn Tagh地域の堆積岩から得られた堆積年代は8.8~7.6億年前よやや古く、これは約7.5億年前のロディニア超大陸の分裂の直前に形成されたリフト帯を充填した堆積物であると考えられる。同様の年代をもつ岩石の広域対比から、タリム地域は当時、南中国地塊や北インド地塊と連続していたと考えられる。3) 中部Altyn Tagh地域の堆積岩の堆積年代は最も若く4.6~4.3億年前である。つまりこの堆積岩はパレオテチス海の閉塞の後に堆積したものである。鉱物のHf同位体データから、これら堆積物を供給した後背地には、海の閉塞によって生じた大陸衝突にともなって形成された様々な火成岩が露出していたと考えられる。これは、一般的に大陸衝突にともない大規模なマグマ活動が起こることと調和的である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Geological Society of America Bulletin
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