研究課題/領域番号 |
19H00696
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分16:天文学およびその関連分野
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
郡司 修一 山形大学, 理学部, 教授 (70241685)
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研究分担者 |
水野 恒史 広島大学, 宇宙科学センター, 准教授 (20403579)
北口 貴雄 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30620679)
三石 郁之 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (90725863)
林田 清 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (30222227)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
44,200千円 (直接経費: 34,000千円、間接経費: 10,200千円)
2023年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2022年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2021年度: 7,670千円 (直接経費: 5,900千円、間接経費: 1,770千円)
2020年度: 11,050千円 (直接経費: 8,500千円、間接経費: 2,550千円)
2019年度: 10,140千円 (直接経費: 7,800千円、間接経費: 2,340千円)
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キーワード | IXPE衛星 / X線 / 偏光 / X線偏光 / IXPE / Cyg X-1 / Crab Nebula / Vela Pulsar Nebula / GRB 221009A / 4U 0142+61 / X線偏光観測 / ブラックホール / パルサーウインドネビュラ / マグネター / ガンマ線バースト / 偏光X線 / かに星雲 / 超新星残骸 / 残光 / 高エネルギー天体 |
研究開始時の研究の概要 |
「本当にブラックホールの周りの時空は歪んでいるのか。」という素朴な問いに答えることは、一般相対論の実験的な検証という意味でも大きな価値がある。そのような観測を統一的に行う事は不可能であると思われてきたが、2021年4月に打ち上げられる偏光X線観測衛星IXPEはその状況を大きく変える可能性がある。なぜならX線の偏光情報を取得することでブラックホ ール近傍の時空の歪みを観測できる事が理論的に予言されているからである。そこで我々はIXPE衛星によりブラックホールを観測し、その時空の歪みを偏光情報を使って検出する事を計画している。
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研究実績の概要 |
IXPE衛星は世界で初めてX線領域で偏光撮像観測を可能にした衛星であり、2022年1月から科学観測が始まり、様々な天体に対して成果が出てきた。特に我々は、ブラックホール候補天体であるCyg X-1、マグネターである4U 0142+61、パルサーウインドネビュラであるCrab NebulaとVela Pulsar Nebula、そしてガンマ線バーストGRB221009Aの解析に大きく貢献した。Cyg X-1では4%という大きな偏光度が観測され、またエネルギーが上がるに従ってその偏光度も上がる傾向があることが分かった。またマグネターでは低エネルギー側と高エネルギー側で偏光方向が90度変化している事が観測された。これは高いX線が散乱を受けている兆候であり、マグネター表面の状態に関しての示唆を与えた。またCrab Nebulaの観測では、局所的には40%程度偏光している事が分かり、トーラスと呼ばれている部分に沿った偏光が観測された。一方Vela Pulsar Nebulaでは局所的には70%に達するような究極的な偏光度が観測された。これはシンクロトロン放射で達成できる偏光度の限界であり、究極的に磁場が揃っている事が分かったが、従来の乱流磁場の解釈と相容れず、新たな問題を提起した。最後にGRB221009Aでは、IXPEは爆発後2.5日後に観測を開始したが、プロンプトの成分とアフターグローの成分の両方の観測に成功した。これはたまたまこのガンマ線バーストが我々の銀河面すれすれで起こり、X線が散乱を受けて遅れて届くという現象が起こったためである。X線領域でのガンマ線バースト偏光観測は今まで行われていなかったため、有為な偏光検出はできなかったものの、ジェットの開き角やジェットと視線方向の角度などの情報を取得できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
我々は当初、GRS1915+105というブラックホール候補天体をIXPE衛星で観測し、ブラックホールのスピンの情報を得ることを計画していた。しかし、GRS1915+105のフラックスがIXPE衛星打ち上げ後弱くなってしまい、有為な観測が行えなかった。一方、Cyg X-1、4U 0142+61、Crab Nebula、Vela Pulsar Nebula、GRB221009A等の天体の解析に積極的に参加し、科学成果創出に大きく貢献した。以上にあげた5つの天体の主著者(Tier-1メンバー)に、本科研費のメンバーが入っており、Cyg X-1と4U 0142+61の成果はScience誌に掲載され、Vela Pulsar NebulaはNature誌に、Crab NebulaはNature Science誌に、GRB 221009AはAstrophysical Jpurnal Letters誌で発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
本科研費は2023年度をもって終了となるため、今年がまとめの年となる。そのため今まで得られた研究成果を学会などで発表すると同時に、さらにIXPEで得られた成果を引き続き論文化していく。また本科研費の当初の目的であるGRS 1915+105の観測がまだ行われていない。現在フラックスが上がってきた段階で、急遽天体が観測できるようなスケジューリング(ToO)になっているため、条件が整い次第観測及び解析を行いたい。またGRS1915+105以外にもブラックホール候補天体をIXPEは幾つか観測しているが、これらからも限定的ではあるが、膠着円盤の性質に関して情報を得ることができると思われる。そのため、GRS1915+105以外のブラックホール候補天体の解析を今年度に行う予定である。
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