研究課題/領域番号 |
19H00718
|
研究種目 |
基盤研究(A)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分17:地球惑星科学およびその関連分野
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
金子 克哉 神戸大学, 理学研究科, 教授 (40335229)
|
研究分担者 |
羽生 毅 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), グループリーダー (50359197)
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (70359206)
中岡 礼奈 神戸大学, 海洋底探査センター, 助教 (40756673)
清杉 孝司 神戸大学, 海洋底探査センター, 講師 (90768722)
鈴木 桂子 神戸大学, 海洋底探査センター, 客員教授 (20192544)
巽 好幸 神戸大学, 海洋底探査センター, 客員教授 (40171722)
木村 純一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), 上席技術研究員(シニア) (30241730)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
42,770千円 (直接経費: 32,900千円、間接経費: 9,870千円)
2023年度: 3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 5,850千円 (直接経費: 4,500千円、間接経費: 1,350千円)
2021年度: 6,630千円 (直接経費: 5,100千円、間接経費: 1,530千円)
2020年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
2019年度: 20,410千円 (直接経費: 15,700千円、間接経費: 4,710千円)
|
キーワード | カルデラ火山 / マグマ成因 / マグマ供給系 / 微小領域分析 / カルデラ / 阿蘇火山 / 姶良火山 / 鬼界火山 / メルトインクルージョン / 阿蘇 / 姶良 / 鬼界 / 大規模珪長質マグマ / 下部地殻溶融 / 地殻溶融 / Sr同位体比 / 九州 / 阿蘇,姶良,鬼界 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の最終目的は,巨大噴火をもたらすカルデラ火山では,どのようにその大量のマグマが生成し噴火に至るかを理解することにある.この目的のため,九州の3つのカルデラ火山(阿蘇,姶良,鬼界)を対象に,過去約10万年に噴火したマグマの性質と,その時間変化を明らかにする.カルデラ間の比較研究をもとに,マグマ生成・蓄積・噴火についての共通性・個別性を抽出し,普遍的なカルデラ火山のマグマ過程を明らかにする.研究は既存データに加え,同位体や微量元素の微小領域分析により,マグマ起源物質の特定,マグマ上昇中の進化過程,マグマ溜まりの深さや温度を高精度で明らかにし,カルデラ火山研究のブレークスルーに挑戦する.
|
研究実績の概要 |
カルデラ火山は,大陸地殻を持つ火山帯に普遍的に存在し,大量の大規模珪長質マグマを生産・噴出し,広範囲に壊滅的な被害をもたらすこともある.加えて,地球科学の基本問題である大陸地殻の形成と進化に直接関わっており重要な研究対象である. 2022年度でも引き続き,九州の阿蘇,姶良,鬼界の3つのカルデラ火山のマグマ発生に関わる岩石学的,地球科学的研究を行うとともに,それらの研究により得られたデータから噴火現象に関わる火山学的な検討も行った.阿蘇火山では,噴出物斑晶中のメルトインクルージョンの分析について,新たにLA-ICPMSを用いた微量元素組成を測定した.その結果,REE濃度の変化パターンにより,苦鉄質マグマは角閃石を含まない環境下における生成を,珪長質マグマは角閃石を含む環境下における生成をしていることが分かった.このことはマグマの詳細な生成過程を明らかにするとともに,生成深度の情報も含んでおり,今後さらに解析を必要とする.姶良火山では,噴出物の同位体組成および微量元素組成の分析結果の解析を主として行った.その結果,10万年前からカルデラ生成噴火が起こった3年前までのマグマ供給系において,下部地殻溶融と,その後の桜島火山におけるマグマ供給系において,大きな変化が起こったことを明らかにした.鬼界火山では,7300年前の大規模噴火の海底化の火砕流分布を岩石学的研究と地震学的研究から明らかにし,さらに,その後の火山活動のマグマ供給系の詳細な描像を明らかにし,国際誌に発表した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
阿蘇火山研究については,2021年度にLA-ICPMSを用いた微量元素分析を行う計画であったが,COVID-19の感染状況が悪く,他の分析機関の出張や受け入れが制限され,十分にできなかったが,2022年度において順調に進めることができ,阿蘇火山のマグマの生成過程に関する新たな知見を得ることができた.姶良火山研究については,3万年前のマグマの生成が,下部地殻の部分溶融度の異なる溶融により,苦鉄質及び珪長質マグマが生成し,その後の苦鉄質マグマの浅部地殻の同化作用が起こったことが明らかになった.ほぼ計画通りのことがおおむね達成され,研究は順調に進められている.現在,国際誌への論文を準備しており,近く投稿の予定である.鬼界火山研究については,7300年前の大規模噴火後のマグマ供給系過程に関し,化学組成,温度見積もりなどの岩石学的研究により,大規模噴火の残存マグマから新たな性質を持つマグマの上昇が明らかになった.このことについてはすでに発表済みである.ほかのプロジェクトと共同で行った反射法地震探査により,海底の火砕流分布が推定され,本プロジェクトにおいて,岩石学的検討を行い,その火砕流が7300年前のものであることが確定されたことに関する成果を投稿したが,リジェクトされたため,現在改訂を進めており,近く現在国際誌に論文投稿の予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
阿蘇火山研究においては,LA-ICPMSによる分析を行い,足りないデータを補完する.さらに,これまでの研究の成果,すなわち,Aso-2大規模噴火のマグマの成因,Aso-4大規模噴火マグマの詳細な生成過程,Aso-2からAso-4大規模噴火にかけてのマグマ供給系の進化に関するまとめを行い,国際誌への投稿を行う.姶良火山研究に関しては,前述した,姶良火山の10万年以降のマグマ供給系の変遷についてまとめて,国際誌に投稿する.鬼界火山研究においては,7300年前のカルデラ形成大規模噴火のマグマとその後の活動のマグマについて,メルトインクルージョンの網羅的な分析を行う.この分析においては,LA-ICPMSによる主要および微量元素の組成分析,SIMSによるH2O,CO2,F,Clなどの揮発性成分分析を予定している.これにより,カルデラ形成大規模噴火を挟んだマグマ供給系の変化について,生成過程および生成深度の解析を進める予定である. また当初は予定していなかったが,大規模噴火を起こすカルデラ火山と,そのような噴火を起こさない非カルデラ火山の比較研究が重要であると認識した.そのため阿蘇火山の北約20kmに位置する非カルデラ火山である九重の岩石学的研究を昨年度から開始した.これを2023年度も継続し,大量のマグマ生成が起こる場合怒らない場合のマグマ供給系の違いを明らかにする.
|