研究課題/領域番号 |
19H01039
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研究種目 |
基盤研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
中区分51:ブレインサイエンスおよびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中村 克樹 京都大学, ヒト行動進化研究センター, 教授 (70243110)
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研究分担者 |
伊藤 浩介 新潟大学, 脳研究所, 准教授 (30345516)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
39,650千円 (直接経費: 30,500千円、間接経費: 9,150千円)
2023年度: 8,580千円 (直接経費: 6,600千円、間接経費: 1,980千円)
2022年度: 9,100千円 (直接経費: 7,000千円、間接経費: 2,100千円)
2021年度: 8,450千円 (直接経費: 6,500千円、間接経費: 1,950千円)
2020年度: 8,710千円 (直接経費: 6,700千円、間接経費: 2,010千円)
2019年度: 4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
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キーワード | サイトカイン / 精神疾患 / マーモセット / マカクザル / 脳機能 |
研究開始時の研究の概要 |
統合失調症等の精神疾患は、遺伝子の連鎖解析から原因遺伝子は見つけられていない。一方、母体の炎症により発達障害や精神疾患の子どもが生まれる確率が高くなる。予備的研究から、炎症性サイトカイン暴露によってサルに社会行動異常や認知機能障害等の精神疾患様異常行動が誘発できた。本研究は、神経系の構造や機能が類似しているマカクザルやマーモセットを対象として、遺伝子改変を用いない炎症性サイトカイン暴露により、精神疾患モデルを作出すること、そして誘発される脳の構造や機能異常を神経科学的に解明し、精神疾患モデルを確立することを目的とする。
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研究実績の概要 |
統合失調症は人口のおよそ1%にもおよぶ発症率の精神疾患である。しかし精神疾患の原因遺伝子がいまだ見つからず、その原因や治療法は不明である。その一方で、母体の炎症が胎児にも大きな影響を及ぼし、発達障害や精神疾患の子どもが生まれる確率が高くなることが知られている。申請者らの予備的研究から、ヒトの精神疾患の原因の一つとして考えられている炎症性サイトカイン暴露によって、サルに行動異常が誘発されることが確認できた。 遺伝子改変ではなく、周産期の環境操作(炎症性サイトカイン暴露)により精神疾患様の行動異常を引き起こすことができた。炎症性サイトカイン暴露によって引き起こされる行動および脳機能異常を定量的に評価し、健常個体と比較することにより、その異常の原因を明らかにし、精神疾患モデルとして確立する。 2022年度も脳波を中心とした解析を進めるとともに、ビデオシステムを用いたグループ内での行動を解析した。また、一定間隔で脳のMRIデータを取得し、経年変化を検討している。精神疾患の評価に有用な聴性定常反応(ASSR)をヒト・マカクザル・マーモセットで比較し、種を超えたバイオマーカーとなりうることを示し成果を発表した。また、分担研究者の新潟大学伊藤准教授と新たな高密度脳波計測法を開発し成果を発表した。これまでに前頭葉機能を必要とする逆転学習課題における成績の低下を認めている。それに加え新たにマーモセット用認知課題としてGO/NO-GO課題を開発し、その手法を成果として発表した。このGO/NO-GO課題を疾患モデル個体に応用し、前頭前野の行動抑制機能を評価している。マカクザルに関しても、脳波を中心とした解析を進めるとともに、ビデオシステムを用いた行動解析を行った。 データ解析に関しては、和歌山県立医大の那波宏之教授、東北大学の川島隆太教授と研究室の鴻池菜保助教にアドバイスをもらいながら進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マーモセット5頭中4頭の個体で異常行動が認められている。今年度は特に脳波に関しての研究が進展し、論文発表や学会発表ができた。新たな前頭前野の評価課題も順調に進められている。また、これまでなかなか適当な評価法がなかったアカゲザルに関しても、ASSRの適用が可能となった。さらに新たな3次元行動評価法も成果をまとめている。
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今後の研究の推進方策 |
新生児期の炎症性サイトカイン暴露により引き起こされる行動および脳機能異常を定量的に評価し、健常個体と比較することにより、その異常の原因を明らかにし、精神疾患モデルとして確立する。具体的には、1)前頭前野機能を必要とする逆転学習課題とGO/NO-GO課題の成績をまとめる、2)サーカディアンリズムと活動量、3)ECoGや表面電極を用いた計測により、マーモセットにおける鳴き声に対する応答を検討してまとめる4)MRIを用いた形態画像および拡散強調画像(DTI)を定量化し、健常個体と比較する。最終年度である2023年度は、これまでに取得したデータを解析し、可能な範囲で論文発表や学会発表を進める。 和歌山県立医大の那波宏之教授、東北大学の川島隆太教授、京都大学の鴻池菜保准教授にアドバイスや協力をもらいながら進める。
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