研究課題/領域番号 |
19H01493
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分07040:経済政策関連
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研究機関 | 京都大学 (2020-2022) 同志社大学 (2019) |
研究代表者 |
三野 和雄 京都大学, 経済研究所, 特任教授 (00116675)
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研究分担者 |
荒渡 良 同志社大学, 経済学部, 准教授 (20547335)
堀 健夫 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80547513)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2022年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2021年度: 4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2020年度: 4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2019年度: 4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
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キーワード | 経済主体の異質性 / 経済成長 / 財政政策 / 金融政策 / 所得と資産の分配 / ヘクシャー・オリーン型2モデル / メリッツ型2国モデル / 連続時間の世代重複モデル / 家計と企業の異質性 / 人口高齢化 / 資産と所得の分配 / 貿易パターン / 資本移動 / 所得分配 / 企業の異質性 / 政府規模 / 政府債務 / 借り入れ制約 / 金融ショックと実物ショック / 景気循環 / 政府の規模 / 財政政策の長期効果 |
研究開始時の研究の概要 |
マクロ経済政策の効果を理論・数量的に分析するときには、これまで家計と企業の同質性を前提とすることが多かった。しかし現実のデータは、家計の所得や資産、企業の規模や技術水準には大きな偏りがあることを示している。本研究の目的は、家計と企業の異質性の存在を前提として、マクロ経済政策の効果を再検討することである。 日本経済は30年近くにわたり低成長から抜け出せないでいるが、真に有効な「成長戦略」を探るためにも、本研究が意図するより現実的な設定のもとにおけるマクロ経済政策の理論構築が必須である。本研究の最終的な目標は、マクロ経済政策の再検討を通して日本経済の活性化の道筋をより明確にすることである。
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研究実績の概要 |
(1)各家計の保有する資産の額が異なることを前提にした動学的なヘクシャー・オリーン型の2国モデルを分析し、家計の異質性が国際貿易に与える効果を調べた。その結果、家計の効用関数が非相似型であれば、各国における初期の資産分配の状態が長期均な貿易パターンと両国間における資本の配分に影響することを確認した。代表的家計の存在を前提する標準的なヘクシャー・オリーン・モデルでは両国の初期の資本保有量が長期的な貿易パターンを決定するが、本研究ではそれが初期の分配状態にも依存することそ示し、これまでとは異なる新しい知見を得た。現在、研究成果を査読誌へ投稿する準備中である。 (2)前年度の研究では、生産性の異なる企業が借り入れ制約のもとで同質財を生産するような2国モデルを検討したが、本年度は各企業が異なる財を生産するメリッツ型の2国モデルを用いて同じ問題を分析した。その際、2国間で貸借が許される場合と許されない場合を比較し、異質企業と借り入れ制約が存在するもとでの資本移動の役割を調べた。研究成果をまとめた論文は現在投稿準備中である。 (3)人口変化を仮定した連続時間の世代重複モデルを用いて、人口高齢化が家計間の資産と所得の分配に与える影響を検討した。本研究のモデルでは、毎時新しい家計が生まれるともに、既存家計はポアソン過程に従って死亡する可能性がある。遺産動機は存在せず、新しい家計に資産は配分されないとすれば、年齢と保有資産の2面において家計の異質性が生まれる。標準的な内生成長モデルの設定のもとでは家計間の長期的な資産と所得の分布がパレート分布に従うことを確認したうえで、出生率と死亡率の低下がもたらす人口高齢化が分配にどのような影響を与えるかを調べた。その結果、出生率低下と死亡率低下は質的・量的に異なる影響を生むことを確認した。研究結果は現在論文にまとめているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は新型コロナ感染症の影響がまだ大きく、国内外での共同研究や研究成果の発表を対面で行うことが困難であり、研究の進捗にかなり遅れが生じていたが、令和3年の秋頃からは感染状況も落ち着き。対面での研究相談なども可能になってきたので、研究の捗は改善した。ただ現時点では、当初の計画よりはまだやや遅れている状態にある。 研究実績(1)については、解析的に明確な結果を得ることが予想以上に難しかったが、数値分析で補完することにより、当初に意図した結果の多くを得ることができた。また研究実績(2)については、同様の分析意図をもった既存研究はかなりあるものの、その大半が国際的な資本移動を無視しているため、財の貿易と資本移動を同時に分析できるようにモデルの設定を工夫した。適切なモデルの設定には時間がかかったが、その後の分析は順調であり、このテーマに関する研究の進捗はほぼ計画通りである。 研究実績(3)は比較的最近に取り組み始めたテーマであるが、これまでにも人口減少の可能性を取り入れた成長モデルやrandom growth processのもとでのパレート分布の導出などについて研究を行っていたので、モデルの設定や分析は順調に進んでいる。基本モデルの分析はほぼ済んでいるので、できるだけ早く論文にとめ、査読誌への投稿を目指したい。また基本モデルは拡張の可能性があり、人口高齢化のもとでの財政政策問題などへの応用ができるので、現時点での研究成果の一層の進展を図る計画である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究プロジェクトは令和3年度が最終年度であったが、コロナ禍による研究全体の進捗の遅れが生じたため、平成3年度の基金の一部を4年度に繰り越し、4年度も引き続き研究を続けている。新型コロナ感染症の法的な扱いが5月8日から変わるため各種の規制もなくなり、今後はコロナ禍以前の状態にほぼ戻ると予想される。令和4年度は、対面での定期的な研究集会や研究相談を復活させ、当初の研究計画の完遂を目指したい。より具体的には、次のように研究を進める予定である。 (1)進捗状況の欄で言及した家計の異質性を仮定した2国ヘクシャー・オリーン・モデルと借り入れ制約を仮定した2国異質企業モデルの論文をできるだけ早く完成させ、関連する査読誌に投稿する。 (2)人口高齢化と所得分配に関する論文は、解析的な分析はほぼ終えているが、数値例を検討して議論を補完する必要がある。数値分析を進めてより完成度の高い原稿を用意し、査読雑誌への投稿に備える。また同じフレームワークを2国モデルに拡張し、世代構造を考慮した開放経済モデルを用いて、所得分配と貿易の関係を再検討する。有意な結果が得られれば、無限に生きる家計を前提とする上記の2国ヘクシャー・オリーン型モデルとの差異が明らかにできる。 (3)平成2年度から引き続き検討している異質企業が存在するもとでの政府債務と経済成長の関係については、共同研究者との対面での研究相談を適切に行い、本年度中に論文のかたちにまとめる。
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