研究課題/領域番号 |
19H01786
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
太田 慎一 大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (00372558)
|
研究分担者 |
横田 巧 東北大学, 理学研究科, 准教授 (70583855)
高津 飛鳥 東京都立大学, 理学研究科, 准教授 (90623554)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
15,860千円 (直接経費: 12,200千円、間接経費: 3,660千円)
2023年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2022年度: 3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2021年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2019年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
|
キーワード | 勾配流 / 凸関数 / 曲率 / 最適輸送理論 / Wasserstein距離 / Gromov双曲空間 / 重心 / ピラミッド / リッチ曲率 / 等周不等式 / ローレンツ・フィンスラー多様体 / 分解定理 / 測度の集中 / フィンスラー多様体 / フィンスラー幾何学 / ローレンツ幾何学 / 情報幾何学 / エントロピー / 局所化 / 対数ソボレフ不等式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究で主に取り組む課題は以下の2つです。 (A)熱の伝わり方やその空間の曲がり方との関係、2つの画像の近さを測る量など、非常に幅広い有用性を持つ最適輸送理論のより深い理解と、その理論・実用両面での応用を目指します。 (B)理論・実用双方で極めて基本的な道具である勾配流(ある量が最も減少する方向へと進む流れ)の、方向によって進みやすさが変わる(非等方的な)空間での研究を行い、そのような空間での幾何学・解析学への応用も研究します。
|
研究実績の概要 |
研究代表者の太田はGromov双曲空間上の凸関数の勾配流の研究を行い、勾配流の収縮性と確率測度の重心の振る舞いについて成果を得た。Gromov双曲空間は巨視的な(粗い)意味で断面曲率が負の距離空間であり、幾何学的群論や力学系でよく研究されている。Gromov双曲空間はリーマン多様体ではないフィンスラー多様体を含むが、凸関数の勾配流の挙動がよくわかる樹木に近いことを利用して勾配流を調べ、定量的な収縮性の評価を与えることに成功した。更に、確率測度の重心についても、CAT(0)空間(曲率が0以下の距離空間)との比較によりWasserstein距離に関する収縮性を明らかにした。この他、距離関数が対称ではない距離空間上の凸関数の勾配流についての共同研究も行なった。
研究分担者の横田はボレル確率測度を持つ完備可分距離空間である測度距離空間及び測度距離空間の同型類からなるピラミッドと呼ばれる集合の幾何学に関する研究を行った。特に、数川大輔氏(九州大学)との共同研究でピラミッドのプレコンパクト部分集合に関する研究を行った。また、2つのピラミッドの積を定義し、収束するピラミッドの列の積の収束に関する研究を行なった。
研究分担者の高津は最適輸送距離の緩和問題に引き続き取り組み、勾配流を用いて解くことができない有限集合上の最適輸送問題を、凸関数で緩和して勾配流の手法を適用する共同研究を行なった。特に凸関数としてBregman divegenceに着目し、緩和された最適輸送問題の性質を調べた。また、最適輸送問題の亜種であるsliced Wasserstein距離についても共同研究で考察を深めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は勾配流の研究に進展があり、当初の研究計画を超えた方向への進捗が見られた。Gromov双曲空間はリーマン多様体ではないフィンスラー多様体を含むため、Gromov双曲空間における収縮性の確立は本研究課題の当初の主目標に貢献する成果であるが、一般のフィンスラー多様体やノルム空間上の最適化の研究にはまだ繋がっていない。しかし、Gromov双曲空間は樹木を摂動した空間とも考えられ、フィンスラー多様体とは違った方向への発展が見込める。また、横田は最適輸送理論とも関連するピラミッドの基本的な性質について着実に研究を進めており、高津は最適輸送理論の応用における数学的な研究について継続して成果を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず進行中のローレンツ・フィンスラー多様体の曲率次元条件の研究を完成させる。これは最適輸送理論を用いてリッチ曲率の下限を特徴づける研究であり、近年研究が本格化しているローレンツ幾何学・相対性理論の総合幾何学的な取り扱いに貢献するものである。また、Gromov双曲空間上の凸最適化の研究を更に進め、弱い意味での凸関数の勾配流の研究を行う。Gromov双曲空間上の凸関数の理論は未開拓であり、最適化以外の応用の可能性も探る。
|