研究課題/領域番号 |
19H01793
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
種村 秀紀 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (40217162)
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研究分担者 |
竹居 正登 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (60460789)
今村 卓史 千葉大学, 大学院理学研究院, 准教授 (70538280)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
14,430千円 (直接経費: 11,100千円、間接経費: 3,330千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2019年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 確率微分方程式 / 無限粒子系 / ランダム行列 / 中心極限定理 / エレファントランダムウォーク / 確率模型 / 可積分確率 / 極限定理 / 相転移 / 浸透モデル / 無限次元確率微分方程式 / 生物モデル / 相転移現象 / 浸透模型 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究課題では、無限粒子系における相転移現象を確率解析の立場から調べる。相転移としては、物質の三態(固相、液相、気相)の移り変わりを一般に指すが、同相の物質中の物性変化(結晶構造や密度、磁性など)や基底状態の変化なども含まれている。無限粒子系は粒子配置の空間に値をとる確率過程として記述され、確率解析の適用が可能である。配置空間は、粒子密度、配置の周期性(結晶性)等により幾何的な性質を捉えることができる。本研究課題は、相を特徴付ける幾何的性質を導入し、相転移現象を幾何的性質の急激な変化として捉え、理解する研究である。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、相互作用をもつ無限粒子系の確率微分方程式についての研究を行っている。当該研究期間中に、ブラウン無限剛体球系に対して、確率微分方程式の解の存在と一意性等を示した。剛体球系はハードコア相互作用をもつ系とみなすことができるが、ハードコア相互作用により、配置空間の変更、反射を表す局所時間項の存在、などの問題点が生じる。これらの問題点を連続浸透模型でのクラスターサイズの評価等を用いて解決をした。 強化ランダムウォーク (RRW)は、ウォーカーがグラフの各辺に与えられた重みに比例した確率で推移し、ウォーカーが通った辺の重みを増加させるというモデルである。半直線上の線型RRWについては、点x の右の辺の初期重みがx の冪乗で与えられたとき、ウォーカーが再帰的となるための必要十分条件は冪が1以下であることが知られている.分担者である竹居氏は、冪が1の臨界的な場合は、強化が及ぼす影響の度合いが1よりも小さい場合とかなり異なることを示した。 今村氏は、可積分確率論(integrable probability)に現れる2つの確率測度,q-Whittaker測度と周期的Schur測度の間の関係について研究を行った。q-Whittaker測度に従う分割μの第一成分μ1がλ1+χの分布と等しいことを明らかにした。ただしλ1は周期的Schur測度に従う分割λの第一成分、χはλと独立なq-幾何分布に従う確率変数である。得られた結果により、KPZモデルという興味深いが解析が難しいモデルを、行列式点過程という、相関関数の構造が明快なモデルを用いて研究できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題「粒子系の相転移現象の解析」では、無限粒子系を表す確率微分方程式の一意性という切り口からの研究を主題の一つとしている。これまでの研究により、かなり広いクラスの無限粒子系に対して確率微分方程式の一意性を導くことができた。また、確率微分方程式の解析において重要である係数の正則性についても深い結果を得ている。 一方、強化ランダムウォークに代表される比較的簡単な相互作用をもつ粒子系からの相転移現象の研究も順調に進んでいる。 さらに可積分確率論からの研究も順調である。
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今後の研究の推進方策 |
末尾σ加法族と相転移現象の関係をさらに深く調べる方向で研究を進めていく。これまでに確率微分方程式の強解の存在と一意性と末尾σ加法族の対応を与えたが、様々な相転移現象に対しても、末尾σ加法族との関係が深いことが予想できるため、解析的に厳密にその関係を明らかにしていく。末尾σ加法族についての分類についても研究をすすめていく。 国内外の 研究者との交流により新たな知識を得るとともに、議論を通じて発展させていくことを今後の研究の推進方策とする。
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