研究課題/領域番号 |
19H01795
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
久保 英夫 北海道大学, 理学研究院, 教授 (50283346)
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研究分担者 |
加藤 正和 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 講師 (30526679)
津田谷 公利 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (60250411)
若狭 恭平 釧路工業高等専門学校, 創造工学科, 講師 (60783404)
Yordanov Borislav 北海道大学, 高等教育推進機構, 助教 (50839199)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
15,340千円 (直接経費: 11,800千円、間接経費: 3,540千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2022年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2021年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2019年度: 3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
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キーワード | 双曲方程式 / 非線型摂動 / 弱零条件 / 大域挙動 / 漸近解析 / 双曲型方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
強双曲型方程式に対する2次の非線型摂動を研究対象とする。非線型波動方程式に対しては,その解の大域挙動を解析するにあたり,零枠と呼ばれる座標系やそれに付随する解の時間減衰度を基準とした解の分解などの解析手法が整備されてきた。そこで,これらの手法を強双曲型の方程式系に対しても適用できる形式に拡張し,解の主要部が満たす偏微分方程式系を導出し,その大域可解性に係る条件として弱零条件を導入する。更に,その条件の下で真空中のアインシュタイン方程式のBSSN形式における大域可解性を示す。また,物質場を伴うアインシュタイン方程式についても解析を進め,強重力場を発生源とする時空間における特異性を調べる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、アインシュタイン方程式をプロトタイプとする強双曲方程式系に対する非線型摂動について、その安定性を弱零条件として特徴付けることである。アインシュタイン方程式は、適切な座標系を選ぶことにより、空間的超曲面の外的曲率に関する時間発展方程式系と時間発展を伴わない拘束条件の連立系に書き換えることができる。更に、その発展方程式系が強双曲系となるように定式化したものをBSSN形式と呼ぶ。前年度までに、このアインシュタイン方程式のBSSN形式の初期値-境界値問題の函数解析的な取扱いについて考察した。その際に問題となったのは、拘束条件を満たすように選んだ初期データが境界条件と整合的になるかという点であった。この整合性をみるには、時間発展方程式系の中の低階項の働きを調べなくてはいけないことがわかっている。この事実を踏まえ、今年度は、低階項を伴う強双曲型方程式において、低階項がその方程式の解の大域挙動に与える影響を解析した。主要部の固有値分解に附随する従属変数の置き換えにより、速く時間減衰する解の成分と相対的に遅く減衰する成分を形式的に見出すことはできるが、低階項を考慮するとき、その分解が有効であるかは単純な問題ではない。そこで、低階項に特別な形、例えば主要部と同じオーダーのスケーリング則を持つこと仮定して解析を行った。一方、プロトタイプであるBSSN形式において、数値相対論の分野ではシュバルツシルド計量に対応する静的ブラックホールやそれらを重ね合わせた多重ブラックホールの時間発展について研究が行われているが、ブラックホールの内部には本質的な特異点が存在する。そこで、低階項を調べるにあたり、原点に特異点を持つようなものも考察の対象とすることにし、そのような低階項を選んだときに、解の挙動がどのような影響を受けるのか検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、アインシュタイン方程式を初期値問題として扱うための枠組みついての検討を詳細に亘って行ってきた。特に、数値相対論の分野で標準的に用いられているアインシュタイン方程式の3+1形式の一つであるBSSN形式に着目して研究を進めている。その中の強双曲型方程式における低階項の役割について調べた。議論の本質が明らかになるように、主要部がミンコフスキー計量における波動方程式であり、解の時間微分に関する消散項と解自身に関するポテンシャル項を伴う方程式を採用し、これらの低階項の係数関数に対しては主要部と同じオーダーのスケーリング則を持つことを要請した。それでも尚、消散項の係数関数とポテンシャル項の係数関数との関係によっては、主要部の構造が壊れてしまう場合がある。つまり、消散項の係数関係が優勢なときには、方程式全体が熱方程式と同様な特性を持つようになってしまうのである。そこで、仮定を追加して、次のような二つの場合を扱った。一つ目は、消散項とポテンシャル項の係数関数の間に特別な関係が成り立つことを仮定した研究である。より具体的には、主要部のみならず、低階項まで含めて方程式が1階の微分作用素の積に因数分解できるような条件を設定した。これは、ある意味、考えている空間の計量を変更するような操作と言える。これにより解の大域挙動を明らかにすることができた。二つ目は、消散項の係数が零であるとし、ポテンシャル項の係数関数が原点で特異性を持つことを仮定した研究である。この場合はラプラシアンに逆二乗冪型のポテンシャル摂動がついた作用素を扱うこととなり、函数解析的な扱いは難しくなるが、Rellich型の不等式を導出することによりその困難を克服した。更に、ポテンシャル項の係数関数が反発的である場合には、時間大域解の挙動を明らかにするエネルギー評価を導くことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、アインシュタイン方程式のBSSN形式の中の発展方程式に対する初期値-境界値問題を解くための枠組みに対する理解が深まった。その過程において、低階項を伴う強双曲型方程式の重要性が浮き彫りとなった。今年度の研究では、低階項の係数関数に様々な仮定を課すことにより、初期値問題の時間大域可解性や大域解の解の挙動について明らかにすることができた。しかしながら、一般論の構築には程遠く、許容すべき低階項はどのようなものなのか見定める必要がある。実際、強双曲型という概念は低階項によらないものであるため、低階項についての制限を有する適切な概念を確立することが必要と思われる。その際、プロトタイプであるBSSN形式における低階項が含まれるように新しい概念を導入することが重要である。その上で、次の研究対象はその新しい概念を満たすような双曲型方程式に対する非線型摂動の問題である。その安定性を弱零条件として特徴付けるために方程式の解の成分をその大域挙動を解析しやすい形に分解することを考える。その分解を行うにあたっては、低階項からの寄与を考慮することになるが、それは同時に方程式が満たすべき新しい概念とも密接に関係している。さて、その分解において時間減衰の遅い成分が解の主要部へ及ぼす影響が強いことから、ゆっくり減衰する成分に着目することにより、元の方程式系の本質的な部分を表現する偏微分方程式系ーReduced Systemーが導出される。と同時に、主要部に附随する解の分解は特性曲面と関係する零枠と呼ばれる解の減衰度を区別するのに都合の良い座標系をも示唆する。更に、その座標系を用いて非線型項を書き直すと、解の時間減衰と密接に関連する非線型項の代数的な構造をあぶりだせる。このようにして、新しい概念を満たす双曲型方程式系に対する弱零条件を定式化について検討する。
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