研究課題
基盤研究(B)
原生代末期から古生代最初期のカンブリア紀にかけ、大規模な氷期イベントの終了後、多細胞動物の出現と急速な進化が行われた。しかし地質・古生物記録の乏しさから、その実態に関してはほとんどが未解明である。当研究では、モンゴル西部地域の連続するエディアカラ系~下部カンブリア系連続層序などをターゲットに、氷期からカンブリア紀前期に至る生物進化事変を実証的に明らかにすることを目標とする。特に動物体の行動の化石である生痕化石、小型有殻化石、堆積岩の化学分析に基づく環境復元に焦点を当て、多細胞動物(特に左右相称動物)の初期進化の実態の解明と、より確実なデータに基づく当時の生態系の復元を目指す。
エディアカラ紀からカンブリア紀には多細胞動物の急激な出現と多様化が起こっているが、エディアカラ紀からはほとんど多細胞動物の化石は産出せず、なぜ多様化が短期間に生じたように見えるのかも解明されていない。本研究ではモンゴルでのフィールド調査を中心にこの問題に取り組んだ。また海洋環境と底生生物の分布や成長との関係、例外的に良好に保存された化石の保存メカニズムに関する研究も行った。その結果、エディアカラ紀にはすでに多細胞動物が存在し、捕食動物から避ける行動の存在が確かめられた一方、藻類化石の連続的な産出から、植物ではエディアカラ紀とカンブリア紀との境界に大きな絶滅現象はなかったことが示唆された。
カンブリア紀の多細胞動物の急激な多様化はダーウィン以来の生物学の大きな課題の一つであり、それ以前の時代から化石の証拠が見つからないのは大きな謎であった。我々のモンゴル西部の調査から多細胞動物がカンブリア紀以前に存在したことが見出され、捕食者から逃れる行動をとっていたことも分かってきた。また藻類化石はカンブリア紀以前とそれ以降で連続的に同じ種が産し、動物とは異なる進化を当時示していたことも初めて分かってきた。このような生物進化の大問題をフィールド調査から解明することができたことは、学術界のみならず一般にとってもこの世の中の多様な動物の世界の始まりを知るうえで大きな意義を有すると考えられる。
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