研究課題/領域番号 |
19H02397
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分25030:防災工学関連
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
荒戸 裕之 秋田大学, 国際資源学研究科, 客員教授 (50728433)
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研究分担者 |
山本 由弦 神戸大学, 理学研究科, 教授 (10435753)
山田 泰広 九州大学, 工学研究院, 教授 (20362444)
千代延 俊 秋田大学, 国際資源学研究科, 教授 (40526430)
白石 和也 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(地震発生帯研究センター), 副主任研究員 (40756491)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,250千円 (直接経費: 12,500千円、間接経費: 3,750千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2020年度: 9,750千円 (直接経費: 7,500千円、間接経費: 2,250千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 海底地すべり / 地すべり津波 / すべり面 / 内部変形構造 / 滑動機構 / 静内海底地すべり堆積体 / 日高トラフ / 稲村水中地すべり堆積体 / 地すべりモデル / 津波防災 / 地すべり津波災害 / 日高舟状海盆 / 三次元地震探査 / コア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、北海道南部沖の「静内海底地すべり堆積体」を取り上げ、①三次元地震探査データとピストンコア堆積物試料に基づく分布、表面形状、内部構造の特徴を詳細に把握し、②復元モデルの構築によって海底地すべりの物性・運動的なパラメータを抽出する。これに基づいて③三次元的かつ動的で、堆積地質学的により現実性の高い海底地すべり前進モデルの構築を行う。 本研究によって得られる海底地すべりの運動学的モデルは、津波の数値シミュレーションや復元水槽実験を介して、地すべり津波防災・減災に貢献するものである。
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研究実績の概要 |
当該研究の目的は、[1] 海底地すべりの発生メカニズムを堆積学的に理解すること、[2] 海底地すべりの運動学的なモデルを構築することの2点を主要目的としている。これらの目的を達成するために、当該年度までに以下の検討を進めてきた。 [a] 三次元地震探査データを用いた静内SLSの解析:北海道南部沖日高トラフにおける三次元地震探査データを用いて、静内SLSの分布形態、表面形状、内部変形構造の特徴を三次元的に解析する。その一環として提案したSCORE Projectによる静内SLSのコア掘削は具体的時期は未定ながら今後実施される予定であり、コア採取と採取コアの分析のための準備を進めてきている。 [b] 陸上に露出する地質時代の海底地すべり堆積体の構造解析および試料分析:陸上に露出分布する海底地すべり堆積体として、富山県上市町の稲村SLSと新潟県柏崎市の牛ヶ首SLSに着目し調査を行ってきた。稲村SLSにおいては滑動体の露頭記載を行い、分布形態、表面形状、内部変形構造の特徴を解析した。また、稲村SLSにおいてハンドドリル、エンジンカッターによるコア試料掘削・採取を実施し、滑動体およびすべり面の堆積相、堆積構造、地質年代、物性の分析とデータ解析を進めている。牛ヶ首SLSは、柏崎市の天然記念物に指定され立入制限されていることにも配慮し、ドローン撮影と岩相のAI解析を計画中である。 [c] 海底地すべりの運動学的モデル構築:これまでに得られた解析結果や分析データを統合し、海底地すべりの運動学的なモデルを構築するべく準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
[a] 三次元地震探査データを用いた静内SLSの解析:日高トラフ北縁斜面に位置する静内SLSを対象とする三次元地震探査データ解析は、外部形状解析、内部変形構造解析の概査について終了している(荒戸ほか, 2021など)。またアナログとして、他海域の海底地すべりの解析も進めその一部は荒戸(2022)として公表した。また静内SLSについては、実堆積物試料による海底地すべり発生機構および運動様式の解析を行う目的で、SCORE Project(地球深部探査船「ちきゅう」を用いた地球表層科学掘削プログラムで、JAMSTECとJ-DESCにより推進される科学プログラム)に対し科学掘削実施の提案を進めてきたが、令和4年3月、この提案がJ-DESCによって受理され、JAMSTECの地球深部探査船「ちきゅう」運行計画にProposal #014として採択された。 [b] 稲村SLSの地すべり構造解析:地表に露出する地質時代の海底地すべりのひとつが、富山県上市町稲村地内の採石場跡地に露出する稲村SLSである。同地における昨年度までの地質構造解析および採取試料分析の結果、i) 稲村露頭の地層は大局的に8つの層位学的ユニットに区分されること、ii) 下位のユニットA、BおよびCは地すべりの痕跡のない非滑動整然層であること、iii) 地すべり体を構成するユニットDの互層は基底のすべり面とそこから分岐する複数のすべり面によってすくなくとも8回繰り返しており流下方向に短縮したこと等が判明した(荒戸ほか, 2023)。ここまでの成果については立山黒部ジオパーク協会の協力を得て解説用パネルを製作し、すでに初等中等教育や一般啓蒙に活用している。 [c] 海底地すべりの運動学的モデル構築:これまでに得られた解析結果や分析データを統一的な観点から整理し、海底地すべりの一般的な運動学的なモデルに統合するべく準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
[a] 三次元地震探査データを用いた静内SLSの解析:今後は地すべりの運動像により特化した解析、たとえば各部位の移動距離の算定、圧縮構造と引張構造の分布関係の特定、滑動しなかった周辺部との差異がなんであったかの追求を進める。静内SLSにおけるSCORE掘削は航海日が未定であるが、コア試料が採取された場合には、i) 滑動体とその下位の非滑動整然層の間のすべり面の特定とその物性分析、ii) すべり面とそれに対比される周辺の非滑動面の堆積相、堆積速度、物性の違いの解析、iii) 滑動体内部の変形構造の観察、iv) 同位体年代モデルに基づく滑動時期および滑動速度の推定等を行う計画である。 [b] 稲村SLSの地すべり構造解析:今年度5月以降、調査を再開し、i) ユニットD内部の変形構造の特定、ii) ユニットD内部の鍵層に着目した繰り返し回数の把握、繰り返しに伴うすべり面の分岐様式の把握、iii) すべり面の岩石試料の追加採取、iv) 昨年採取したものも含め、すべり面の岩石試料のポリッシュの製作とその観察、 v) 各ユニットの岩石薄片観察、vi) 稲村SLSの滑動モデル検討を実施する計画である。 [c] 海底地すべりの運動学的モデル構築:静内SLSや稲村SLSなどでこれまでに得られた解析結果や分析データを統一的な観点から整理し、海底地すべりの一般的な運動学的なモデルに統合する計画である。
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