研究課題
基盤研究(B)
脳が多様な機能を実現するには、その構造基盤としての“標準回路”のみならず、様々な学習によって可塑的に変化する“動的回路”が重要である。本研究では、電子顕微鏡による大規模電顕画像3次元再構築処理法と光学顕微鏡観察法を相関させ、マウスの運動学習に伴う大脳皮質第一次運動野の神経回路のダイナミックな変化を解析する。運動学習に伴い形成される新規のシナプス入力の由来が大脳皮質錐体細胞であるか視床の神経細胞であるかを明らかにし、それぞれが運動学習時にもたらす機能を推論する。この生体から超微細構造への“シームレスイメージング”により、運動学習を可能とする神経回路のリモデリングメカニズムを明らかにする。
電子顕微鏡による大規模電顕画像3次元再構築処理法と光学顕微鏡観察法を相関させ、マウスの運動学習に伴う大脳皮質第一次運動野の神経回路のダイナミックな変化を解析する。運動学習に伴い形成される新規のシナプス入力の由来が大脳皮質錐体細胞であるか視床の神経細胞であるかを明らかにした。大脳皮質錐体路細胞にGFPが発現する遺伝子改変マウス(Thy1-M系統)を用いて、狭いスリット穴越しに小さい餌(粟)を前肢でつかみ取る課題を、学習させた。M1の前肢領上に頭蓋窓を作製し、トレーニング期間中、毎日、同一のPT細胞樹状突起セグメント(10-20箇所)を2光子励起顕微鏡下で生体観察し、棘突起の新生と消失を観察した。種掴み成功率からマウス個体ごとの学習期を割り出し、学習前、習得期(4日目程度)、完成期(10日目以降)の動物を灌流固定し、M1前肢領域の脳切片を作成した。VGluT1( 錐体細胞の神経終末マーカー)、VGluT2(視床-皮質神経終末マーカー)、Homer(興奮性シナプス後膜マーカー)、GFP(錐体路細胞蛍光マーカー)に対する蛍光4重染色を行い観察した。習得期には、新生棘突起にシナプスを形成する神経終末の多くが、大脳皮質2次運動野(M2)由来であること、完成期にはそれが消失するが、視床由来の神経終末の入力を受けている棘突起は残存していることを見出した。本年度は、高速電顕画像撮影装置Blade-TEM用の切片作成装置ATUMtomeの改造を実施した。Blade-TEMの使用条件検討を行い、Blade-TEM装置の本格撮影運転を実施し、2.3 nm/pixelの解像度で、1.1mm x 1.6 mmの画像(約500 TB)の撮影を連続切片約1200枚で実施し、large volume EMデータ(vEM)獲得に成功した。今後は、vEMの画像処理技術の開発をすすめる。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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https://www.nips.ac.jp/release/2022/07/post_486.html