研究課題
基盤研究(B)
脳が多様な機能を実現するには、その構造基盤としての“標準回路”のみならず、様々な学習によって可塑的に変化する“動的回路”が重要である。本研究では、電子顕微鏡による大規模電顕画像3次元再構築処理法と光学顕微鏡観察法を相関させ、マウスの運動学習に伴う大脳皮質第一次運動野の神経回路のダイナミックな変化を解析する。運動学習に伴い形成される新規のシナプス入力の由来が大脳皮質錐体細胞であるか視床の神経細胞であるかを明らかにし、それぞれが運動学習時にもたらす機能を推論する。この生体から超微細構造への“シームレスイメージング”により、運動学習を可能とする神経回路のリモデリングメカニズムを明らかにする。
生体脳観察と電顕観察を組み合わせた光顕-電顕相関法を開発し、前肢を用いたタネ掴み運動学習時にM1皮質で生じる神経回路変化を解析した。学習課題実行中のマウスM1皮質で、2次運動野(M2)→M1神経路は「運動学習」に重要な役割を担う一方、体得した「運動記憶」は視床→M1神経路に引き継がれ、神経回路リモデリングが生じていることを観察した。「記憶」は「学習」の延長にあることから、これまでは「学習」によって新たな神経回路が形成され、それが成熟し「記憶」神経回路として機能すると考えられていた。この研究で、“学習シナプス”は“記憶シナプス”の形成を助け、学習記憶が成立するという新説を提唱するに至った。
今回の研究で、脳が“学習”した事柄をいかにして“記憶”に変換していくのかについて、新たな知見を示すことができました。例えば、箸の使い方を練習すると、初めは一生懸命に指先に神経を払う必要がありますが、練習すればするほど箸使いが上手になります。そのうちに、会話したり、テレビをみたり、新聞を読んだりしながら、無意識下で箸を上手に使いこなして食事をとるようになります。このような日常の運動学習に関わる脳の学習メカニズムの解明につながる成果だと考えています。
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https://www.nips.ac.jp/release/2022/07/post_486.html