研究課題
基盤研究(B)
糖尿病網膜症では、血管壁におけるペリサイトの消失がバリア機能を破綻させ、炎症と線維化が進行する。しかし、高血糖モデル動物ではヒト網膜症を再現できないため、個々の病態の因果関係については不明な点が多い。そこで我々は、抗PDGFRβ抗体を投与してペリサイトを消失させることにより、高血糖を経ずに糖尿病網膜症と同様の病態を再現するモデルマウスを確立した。本研究では、ペリサイト消失網膜における炎症と線維化の細胞・分子機構を解明することにより、糖尿病網膜症を含む眼疾患の新規治療法開発に展開することをめざす。
新生仔マウスの腹腔内に抗PDGFRβモノクローナル抗体(クローンAPB5)を投与して網膜血管壁のペリサイトを消失させると、糖尿病網膜症と同様の血管異常を再現することができる。本研究では、ペリサイト消失網膜の血管壁周囲に浸潤する単核食細胞が、活性化ミクログリアと単球由来マクロファージの双方に由来することを明らかにした。ペリサイト消失に伴う血管透過性亢進により網膜剥離が発症すると、活性化ミクログリアが網膜下に集積して線維化を誘導した。こうした線維化組織の筋線維芽細胞は、ペリサイトと網膜色素上皮細胞の双方に由来することが明らかとなった。
糖尿病網膜症では、血管壁におけるペリサイト消失によりバリア機能が破綻する。こうした状況では炎症性サイトカインの発現が上昇し、単核食細胞が網膜内に浸潤する。さらに進行した網膜症では、線維血管増殖膜が牽引性網膜剥離をきたして失明に至る。しかし、高血糖モデル動物ではこれらの病態を十分に再現できないため、網膜における炎症と線維化の細胞・分子機構については不明な点が多い。本研究ではペリサイト消失網膜において炎症と線維化を再現し、単核食細胞や筋線維芽細胞の由来を同定することに成功した。本研究の成果は、糖尿病網膜症の病態理解を深め、新規治療標的の探索に資すると期待される。
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すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 8件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 12件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件)
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