研究課題
基盤研究(B)
造血幹細胞は造血システムにおいて最も中心的な役割を果たす体性幹細胞として知られているが、その自己複製分裂の制御機構においては未だ不明な点が多い。これまでに申請者らは、分裂誘導時に上昇する造血幹細胞の細胞内Ca2+/ミトコンドリア膜電位を抑制することが、分裂後の幹細胞の運命を「分化」から「幹細胞性維持」にシフトさせることを見出している。本研究では、分裂誘導刺激時のエネルギー代謝の状態が自己複製分裂・分化分裂のスイッチと働くことを明らかにし、造血幹細胞の自己複製分裂のメカニズムに迫ることを目的とする。
本研究では、主に骨髄造血再生期における造血幹細胞の研究を通して、造血幹細胞の分裂後の運命決定においてはクロマチン動態の制御が極めて重要であることを見出した。さらに、還元的グルタミン代謝経路における重要な代謝酵素であるAcly、並びにミトコンドリア代謝は、ヒストンアセチル化を介して「クロマチンアクセシビリティ上昇を示す遺伝子」の発現を制御することで、造血幹細胞の増幅・維持・分化等の機能が制御されることを明らかにした。
本研究において、造血幹細胞の運命決定におけるクロマチン動態制御、及び造血幹細胞の機能制御における代謝制御の役割が明らかになり、「クロマチン動態と代謝制御」が協調して幹細胞機能を制御しているという、新たな理解を示した。これらの発見により、造血幹細胞の機能制御の理解が深まることで、再生治療・遺伝子治療を視野に入れた試験管内における幹細胞操作方法の開発や、抗癌剤投与の副作用として知られている骨髄抑制の新規治療法の開発等に寄与することが期待される。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 8件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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