研究課題/領域番号 |
19H04199
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分61060:感性情報学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
菊池 吉晃 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 客員教授 (50134739)
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研究分担者 |
則内 まどか 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 客員研究員 (20571897)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
16,120千円 (直接経費: 12,400千円、間接経費: 3,720千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2019年度: 6,110千円 (直接経費: 4,700千円、間接経費: 1,410千円)
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キーワード | セルフタッチ / fMRI / 感性 / 脳 / 神経メカニズム |
研究開始時の研究の概要 |
他者への身体的接触は母子や異性間絆形成において重要で、その効果について多くの研究がなされてきたが、自己が自己に触れるセルフタッチについては研究がなされてこなかった。セルフタッチは胎生中期において認められる根源的動作で、自己認知においても重要である。また胎児のセルフタッチは母親のストレスと相関することから、外界からのストレスから身を守るという適応的に重要な意味がある。また成人においても認められ多様なストレスが蔓延する現代社会に生きる私達にとってきわめて重要な身体的自己を基盤とする自己防衛機構と考えられる。本研究では、この根源的かつユニークな感性であるセルフタッチの神経メカニズムを明らかにする。
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研究実績の概要 |
セルフタッチは、胎児の頃から認められる自己を守るための本質的かつ重要な身体動作・行動である。すなわち、セルフタッチは人間が時々刻々変化する環境に適応的に生きる上で極めて重要かつ根源的な動作であることから、その神経メカニズムを解明することは極めて重要である。本研究では、3.0Tの超高磁場機能的磁気共鳴画像法(fMRI: functional magnetic resonance imaging)を用いて、健常成人のセルフタッチの神経メカニズムを明らかにし、そこに潜む特別な感性を科学的に明らかにすることである。研究開始初年度から本年度までに、fMRIデータ解析の方法において、通常の全脳解析に加えて、関心領域解析、機能的結合解析、PPI(Physio-Physiological Interaction および Psycho-Physiological Interaction)解析などを実際の実験データに適用し、セルフタッチの神経ネットワークを明らかにする上で最適な解析方法を見出すために様々な試行錯誤をおこなってきた。その結果、PPI解析法が同目的を達成する上でもっとも有効であることが判明した。同手法の適用によって、セルフタッチにともなって両側の2次体性感覚野の同期的活動性が延髄の吻側腹外側部における神経活動を抑制することが明らかになった。同部位は心血管系に影響を与える交感神経のコア領域であることから、セルフタッチの神経メカニズムを考える上できわめて重要である。さらに、前帯状皮質や扁桃体との交互作用によっても延髄吻側腹外側部の活動低下を示したことから、セルフタッチにおける自己を守るための神経メカニズムの真実に一層迫り得る可能性が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の目的は、3.0Tの超高磁場機能的磁気共鳴画像法(fMRI: functional magnetic resonance imaging)を用いて、健常成人のセルフタッチの神経メカニズムを明らかにし、そこに潜む特別な感性を科学的に明らかにすることである。本年度まで、fMRIデータ解析の方法において、通常の全脳解析に加えて、関心領域解析、機能的結合解析、PPI(Physio-Physiological Interaction および Psycho-Physiological Interaction)解析などを実際の実験データに適用し、セルフタッチの神経ネットワークを明らかにする上で最適な解析方法を見出すために様々な試行錯誤をおこなってきた。その結果、PPI解析法が同目的を達成する上でもっとも有効であることが判明した。同手法の適用によって、セルフタッチにともなって両側の2次体性感覚野の同期的活動性が延髄の吻側腹外側部における神経活動を抑制することが明らかになった。同部位は心血管系に影響を与える交感神経のコア領域であることから、セルフタッチの神経メカニズムを考える上できわめて重要である。さらに、前帯状皮質や扁桃体との交互作用によっても延髄吻側腹外側部の活動低下を示したことから、セルフタッチにおける自己を守るための神経メカニズムの真実に一層迫り得る可能性が得られた。これらの知見は、本申請研究が目的とするセルフタッチの神経基盤を解明する上できわめて重要な知見であることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究によって、セルフタッチにおいては、両側の2次体性感覚野の同期的活動性が延髄の吻側腹外側部における神経活動を抑制するとともに、前帯状皮質や扁桃体との交互作用によっても延髄吻側腹外側部における神経活動の抑制を示すことが明らかにされた。延髄吻側腹外側部は、心血管系に影響を与える交感神経系のコア領域であることから、このような知見は、セルフタッチの神経メカニズムを考える上できわめて重要である。さらに、両側の2次体性感覚野の同期的活動性は左右の手が同時に触れるというセルフタッチにおける基本動作であり、帯状皮質―扁桃体-中脳周囲灰白質―延髄吻側腹外側部は痛みの下降性抑制系でもある。このように、これまでの研究から、セルフタッチの背後にある自己を守るための神経メカニズムが浮き彫りにされつつある。本年度は、さらに詳細な脳内ネットワークの解析を推進するとともに、これまで集積してきたデータのさらなる解析や実験を重ねることにより、本申請研究の最終ゴールに到達する予定である。
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