研究課題/領域番号 |
19H04350
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
水野 広祐 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 名誉教授 (30283659)
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研究分担者 |
アミアミナ ムティア 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携研究員 (10623845)
亀田 尭宙 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 特任助教 (10751993)
大澤 隆将 総合地球環境学研究所, 研究部, 上級研究員 (40795499)
長谷川 拓也 東洋大学, アジア文化研究所, 客員研究員 (50760534)
岡本 正明 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (90372549)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2022年度: 4,940千円 (直接経費: 3,800千円、間接経費: 1,140千円)
2021年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2020年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2019年度: 4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
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キーワード | 土地所有 / 政府指定の森林地域 / 泥炭地回復 / 慣習的土地権 / 農家社会経済調査 / 土地所有権 / 慣習法 / 泥炭地 / 土地制度史 / 泥炭地荒廃化 / 開墾権 |
研究開始時の研究の概要 |
今日、インドネシア熱帯泥炭地のほとんどは政府指定の森林地域であるが、この事実は、アブラヤシや林業プランテーションの大規模開発を容易にし、泥炭荒廃化や泥炭地火災をもたらしている。また住民は土地権や存在が脅かされている。この問題に、本研究は、世帯社会経済慣習法調査をベースに、泥炭地域における住民の土地に対する権利の強化のための社会実装である社会林業や、ため池の建設・植栽による泥炭地回復と住民参加による土地マップ作成を実施を通して、政府指定の森林地域に暮らす人々の慣習的土地権を中心とする土地権に関連する諸問題を明らかにし、もって現代インドネシア土地・慣習法研究に革新をもたらす。
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研究実績の概要 |
研究初年度の重要課題であった、研究代表者のインドネシア政府から調査許可取得を完了した。またバンドゥンの研究NGOである土地情報センター、ボゴール農業大学土地研究センター、インドネシア大学大学院環境学研究科、リアウ大学災害研究センター、およびインドネシア政府泥炭地回復庁との間で今後に研究協力について協議した。このうち、土地情報センターとボゴール農業大学土地研究センターと共同でセミナーを開催した。この展開として、本年度西カリマンタンおよびパプアにおいて予備調査を実施した。さらに、リアウ大学との協力の元、リアウ州の泥炭地土地問題調査を一部開始した。また、リアウ地域の泥炭地、とくにブンカリス島における土地制度史研究を開始した。これらから、リアウ州スマトラ島沿岸部や島嶼部泥炭湿地林地域において、19世紀半ばよりパンロン伐採ビジネスが展開していたこと、このビジネスのためのコンセッションは、スルタンらが首長である自治政府が出していたこと、しかし19世紀終わりより蘭印政府が出したこと、一方、ブンカリス島では住民はすくなくとも19世紀より非集約的に泥炭地を開墾・利用してきたことが明らかになった。スルタン統治下では、住民に開墾権が保障されており、この開墾権は長く受け継がれ、リアウ州の研究代表者の調査地でも今日も生きている。一方、植民地政府は、住民の権利が存在しないとされた「荒蕪地」にコンセッションを出してきた。ところが慣習法には、そのような「荒蕪地」という概念がない。この概念は、今日、政府管理の森林地域において受け継がれ、その土地には住民の権利はないことになっている。規定では、住民は土地を利用するため政府の許可を得なければならい。この結果、今日まで広く開墾・売買・相続されてきた住民の土地利用は違法となり、泥炭地土地権の不安定化をもたらし、また泥炭地の荒廃化の一因になっていることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度必須であったインドネシア政府からの調査許可を無事取得することができた。また、土地問題研究センター(NGO)、ボゴール農業大学土地研究センターというインドネシア土地問題研究の中心組織との協力体制を確立した。また、リアウ大学、インドネシア政府泥炭地回復庁さらに環境林業省など泥炭問題や社会林業研究のために研究協力が必須な機関との間の研究協力ネットワークも確立した。また、インドネシア大学環境学研究科や泥炭地回復庁との間で、リアウ州メランティ島嶼県における共同研究の協議を進め、そのための研究資金も新たに獲得した。さらに、土地問題調査を、リアウ州プララワン県ランタウ・バル村において開始し、170世帯の世帯調査を行った。さらに、西カリマンタンおよびパプアにおける予備調査を開始した。また、リアウ州ブンカリス県における1000世帯の調査に関しても、リアウ大学のとの間で調査実施の協議を行った。また、リアウ州とくにブンカリス島における泥炭地利用、土地所有制度さらにコンセッションの付与主体に関する歴史研究をオランダ語文献などを用いて実施した。コロナ新型肺炎感染問題で、移動に自由に制限がが生まれたのちは、これらの歴史研究・文献研究に重点を置いた。この文献研究においても、過去の調査データを再整理して、「インドネシア・スマトラ・リアウ地域の泥炭地における土地制度ー不確実性と泥炭荒廃化の要因」と題する英文の論文を完成させ、現在出版に向けた作業を行っている最中である。以上の展開を考えると、おおむね順調に進んでいるということができる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、リアウ州プララワン県およびブンカリス県、さらにメランティ島嶼県における土地権調査を推進する。(メランティ島嶼県における研究は別財源であるが、本研究とも多く重複し、相乗効果が期待できる)ブンカリス県では、これまで2010-15年に調査を実施しておりそれとの比較も実施しる。またブンカリス県における社会林業実施のための準備も進める。さらに、西カリマンタン州、パプア州さらにジャンビ州などにおいても、泥炭地と土地所有に関する研究を、インドネシア研究機関研究者らと共同で研究で進める。ただし、今日、インドネシア政府はコロナ新型肺炎問題対策でショーシャル・ディスタンス政策を強く推進している。そのため、日本からの渡航が困難なうえ、インドネシア国内の渡航も大きく制限されている。このような制限が一刻も早く緩和されることが期待されるが、すくなくとも今年度8月までにこれらが大幅に緩和されるという見通しは立ちにくい。この間は、これまで収集したデータの集計、研究協議の推進、さらに、インドネシア、特に、泥炭地における土地問題の歴史と現状に関する文献研究を推進する。あるいは、ソーシャルディスタンス緩和政策はまだら模様で実施されることも予想され、例えば、国立文書館が再開になれば歴史研究を強める、そして渡航規制が緩められた地域を優先して研究するなど臨機応変の対応をとりたい。さらに今年度後半に、渡航制限が本格的に緩和されたのちは、上記の地域における土地問題、泥炭地回復問題、あるいは住民社会に関する研究を、これまで研究協力ネットワークを構築してきた、土地問題文献センター、ボゴール農大、インドネシア大学、リアウ大学、泥炭地回復庁、環境林業省など協力して実施してゆく。
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