研究課題/領域番号 |
19H04401
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
山本 樹 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任教授 (20191405)
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研究分担者 |
高嶋 圭史 名古屋大学, シンクロトロン光研究センター, 教授 (40303664)
大熊 春夫 大阪大学, 核物理研究センター, 特任教授 (60194106)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
17,160千円 (直接経費: 13,200千円、間接経費: 3,960千円)
2021年度: 5,460千円 (直接経費: 4,200千円、間接経費: 1,260千円)
2020年度: 5,200千円 (直接経費: 4,000千円、間接経費: 1,200千円)
2019年度: 6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)
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キーワード | 放射光光源 / アンジュレータ / 極短周期 / 自由電子レーザー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,既存の低エネルギー小型電子蓄積リングに極短周期アンジュレータを設置して,実際に発生するアンジュレータ放射光のスペクトルを測定することにより,極短周期アンジュレータがこのような小型電子蓄積リングに於ける高エネルギー放射光源として有用であることを実証する。 上記と平行して,極短周期アンジュレータに最適化した光源リングの設計を行う。非常に狭いギャップで動作する極短周期アンジュレータの実用性が,上記の実証を達成することにより,低エネルギーリングにおいても10keVクラスのアンジュレータ硬X線生成が可能な高輝度光源の設計・開発に新たな指針を与えると考える。
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研究実績の概要 |
放射光は今や先端研究のみならず,様々な分野のツールとして利用されるようになったが,小型放射光施設では偏向電磁石放射の利用が主であり,アンジュレータ光の利用は限定的である。しかし,周期長を数mm程度とすることにより,全長30cm程度でも100周期に達するアンジュレータが実現可能になる。このために,板状の永久磁石に多極着磁法により周期磁場を書き込むという新しい手法を開発して,ギャップ駆動可能な実用型極短周期アンジュレータを製作して研究を進めてきた。 本研究では,既存の小型電子蓄積リングに極短周期アンジュレータを設置して,実際に発生するアンジュレータ放射光のスペクトルを計測・評価することにより,極短周期アンジュレータがこのような小型電子蓄積リングで有用であることを実証する。これまでにAichi-SR(あいちシンクロトロン光センター)における極短周期アンジュレータの設置と,その光源性能評価試験実施の検討を行い,アンジュレータ設置と評価試験実施が可能であることを確認できた。 しかし,2019年8月に着磁方式に問題点がある可能性が判明したため、計画を延長して関連調査を行い当初の方式で問題無いことを確認した上で,着磁器の製作を行った。一方で,計画延長後の2020年にCOVID-19感染症の影響で,アンジュレータ設置検討のために不可欠なAichi-SRでの現地確認が困難になり,更に1年計画を延長して2021年に現地確認・調査を行い,Aichi-SRにて実施計画についての検討会を開催して,先行研究(科研費 基盤研究(A),代表者:山本)によって開発した極短周期アンジュレータ(周期長4-10mm程度)を改造して設置の準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,既存の小型電子蓄積リングに極短周期アンジュレータを設置して,実際に発生するアンジュレータ放射光のスペクトルを計測することにより,極短周期アンジュレータがこのような小型電子蓄積リングで有用であることを実証する。これまでにAichi-SRにおける極短周期アンジュレータの設置と,その光源性能評価試験実施の検討を行い,アンジュレータ設置と評価試験実施が可能であることを確認できた。 2019年度に判明した着磁方式における問題点存在の可能性について,計画を延長して関連調査を行い当初の方式で問題無いことを確認した後,着磁器の製作を行った。 また,計画延長後の2020年にCOVID-19感染症の影響で,アンジュレータ設置検討のために不可欠なAichi-SRでの現地確認が困難になり,更に1年計画を延長して2021年にAichi-SRでの現地確認・調査を行い,実施計画についての検討会を開催して,先行研究(科研費 基盤研究(A),代表者:山本)によって開発した極短周期アンジュレータを改造して設置の準備を進めた。このために極短周期アンジュレータ部をAichi-SRのビームダクトの一部としてスムーズに接続してRFインピーダンスによる電子ビームの不安定を抑制するための形状変換部,およびアンジュレータ磁石の温度上昇を防ぐ水冷システム等,必要不可欠な技術開発および機器設計・製作を行った。 一方で,小型電子蓄積リングにおける極短周期アンジュレータの応用に関連して,開発した極短周期アンジュレータ磁場着磁方式を20mm程度の長周期側に延長することにより,より広いエネルギー範囲の放射を小型蓄積リングにおいて利用可能にするという重要性を新たに認識したので,新規の着磁器開発と着磁試験を行い,有効性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,既存の小型電子蓄積リングに極短周期アンジュレータを設置して,実際に発生するアンジュレータ放射光のスペクトルを評価することにより,極短周期アンジュレータが小型電子蓄積リングで有用であることを実証する。これまでにAichi-SR(あいちシンクロトロン光センター)における極短周期アンジュレータの設置と,その光源性能評価試験実施の検討を行いアンジュレータ設置と評価試験実施が可能であることが確認できた。 本年度には,これまでに開発したアンジュレータのAichi-SRへの導入のために,その真空ダクトのAichi-SR加速器との接合部を設計・製作し,設置の準備を進める。 さらに,本研究で目指している極短周期アンジュレータからの,電子蓄積リングにおけるX線放射光の生成試験の実現に必要な,アンジュレータ光源の性能評価を行うための光学系の設計・製作を行う。 また,極短周期アンジュレータ磁石の磁場特性を更に向上させるために,新しい磁石構造の検討等を進め,より高性能の磁気回路の設計に結びつける。 上記と平行して,極短周期アンジュレータに最適化した光源リングの設計を行う。非常に狭いギャップで動作する極短周期アンジュレータの実用性が証明されれば,低エネルギーリングにおいても10keVクラスの硬X線の放射が得られる高輝度光源の設計・開発に新たな指針を与えるからである。これまでに電子エネルギー1.5GeV,周長60.12mで,極短周期アンジュレータを設置できる直線部(1m長)が12箇所ある電子蓄積リングを試験的に設計した。このリングは,実効エミッタンスが35.7nm・radであるが,更に低いエミッタンスを目指した1.5GeV程度の小型光源リングの設計を進める。これらの設計研究を通して,上述の光源性能評価試験の実施に有用な加速器運転の方針についても重要な指針を得ることが出来ると考える。
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