研究課題/領域番号 |
19H05668
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研究種目 |
基盤研究(S)
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配分区分 | 補助金 |
審査区分 |
大区分K
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
檜山 哲哉 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (30283451)
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研究分担者 |
立花 義裕 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10276785)
佐藤 友徳 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (10512270)
朴 昊澤 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), グループリーダー代理 (10647663)
水落 裕樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (20849963)
市井 和仁 千葉大学, 環境リモートセンシング研究センター, 教授 (50345865)
石川 守 北海道大学, 地球環境科学研究院, 准教授 (50373452)
植山 雅仁 大阪公立大学, 大学院農学研究科, 准教授 (60508373)
伊藤 昭彦 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (70344273)
飯島 慈裕 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (80392934)
小谷 亜由美 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (80447242)
鈴木 和良 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境部門(北極環境変動総合研究センター), 主任研究員 (90344308)
近藤 雅征 広島大学, IDEC国際連携機構:CEPEAS, 准教授 (40754346)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
201,110千円 (直接経費: 154,700千円、間接経費: 46,410千円)
2023年度: 32,500千円 (直接経費: 25,000千円、間接経費: 7,500千円)
2022年度: 29,250千円 (直接経費: 22,500千円、間接経費: 6,750千円)
2021年度: 30,160千円 (直接経費: 23,200千円、間接経費: 6,960千円)
2020年度: 50,440千円 (直接経費: 38,800千円、間接経費: 11,640千円)
2019年度: 58,760千円 (直接経費: 45,200千円、間接経費: 13,560千円)
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キーワード | 地球温暖化 / 北極海氷縮小 / 大気-陸域水循環 / 永久凍土荒廃 / 温室効果気体 |
研究開始時の研究の概要 |
北極海氷縮小によって大気-陸域水循環が大きく変動する北ユーラシア永久凍土域を対象に、多圏(大気・陸域・海洋)にまたがり起源別の水の動きを追跡する水循環統合モデルを開発し、衛星リモートセンシングデータを活用して湛水域時系列マップと植生変化域時系列マップを作成する。それらを用いて、並行して開発中の陸域生態系物質循環モデルにより、温室効果気体の放出・吸収量の時系列マップを作成する。北ユーラシアの複数点で温室効果気体フラックス観測を行い、得られた観測データを機械学習によるデータ駆動型経験モデルを用いて広域化し、温室効果気体の放出・吸収量の時系列マップの検証を行う。
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研究実績の概要 |
4つの班が連携し、目的達成に向けた活動を継続した。陸域観測班は、複数の衛星リモートセンシングデータを組み合わせることにより、2020年の暖候期におけるシベリアの異常高温現象とその地表面状態への影響を解析した。その結果、暖候期の異常高温はシベリアの融雪時期と植生成長時期の早期化を引き起こし、光合成量が例年に比べ約20%増加したことが明らかになった。陸域モデル班は、トレーサーモデュールを組み込んだ水循環統合モデルを用いてレナ川流域における水循環要素の起源を定量評価した。その結果、暖候期降水(降雨)が蒸発散の主要な起源水であること、融雪水が河川水の主要な起源水であること、そして地下水(または地下氷融解水)は蒸発散の主要な起源水ではないことが明らかになった。地下水(または地下氷融解水)は、秋季、レナ川上流域(不連続永久凍土域)において河川水に対する寄与が大きく、年間の河川流出量の14%を占めていることがわかった。そして近年、河川水に占める地下水(地下氷融解水)の寄与が増加していることがわかった。大気班は、改良した水蒸気トレーサーモデルを用いて39年間のトレーサー実験を行った。その結果、シベリアの大気水蒸気量に占める北極海蒸発起源の水蒸気の割合が徐々に増加してきていることがわかった。特に、2000年頃を境に、9月には西シベリアで、10月~12月には東シベリアで増加傾向が顕著であった。統括班は、データフュージョン技術を用いて低解像度画像からの光学植生指数の予測(植生変化域の推定可能性)を検討するとともに、ALOS、ALOS2 合成開口レーダ後方散乱強度の変化から植生を含む地表面状態の変化検出手法を検討し、現地観測データと統合モデルとの連携を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
陸域観測班は、北モンゴル・カラマツ林用の海外寒冷地向けフラックス観測システムの輸送を完了させることができた。解析面では、2020年の暖候期におけるシベリアの異常高温現象とその地表面状態への影響についての結果が得られたため、今後、国際学術誌への投稿を目指す。陸域モデル班の実施内容(レナ川流域における水循環要素の起源の定量評価)は世界に先駆けた斬新な研究成果である。特に、トレーサーモデュールを組み込んだ水循環統合モデルから、土壌が凍結する直前(秋季)の降雨の一部が土壌表層に凍結貯留され、翌年の春季に融雪水や降雨と混合し、蒸発散に対して融雪水と同等の寄与率を有していることがわかったため、北ユーラシア永久凍土域における水循環のメモリー効果を定量的に把握できた。大気班が実施した水蒸気トレーサーモデルの改良も順調であり、北極海で蒸発した水蒸気の輸送を高精度で追跡できた。シベリアの大気水蒸気量に占める北極海蒸発起源の水蒸気の割合が徐々に増加してきていることがわかったため、北極海氷縮小が進行するに伴なって海面からの蒸発量が増加し、それが大気循環を通じて北ユーラシアに輸送されるという当初の仮説を支持する結果が得られた。統括班は、新型コロナウイルス蔓延の影響で延期になっていた国際シンポジウムを2022年3月8日~11日の4日間にわたりオンラインで開催し、67名の参加者を得て成功裏に議論することができた。またPAWCs月例オンラインセミナーを継続し、研究の進捗状況を定期的に共有した。その結果、多数のハイインパクトな論文の創出につながった。 以上のように、新型コロナウイルスの蔓延の影響で実施困難となった現地観測以外の研究計画は概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
4つの班が連携し、目的達成に向けた研究活動を継続する。陸域観測班は、北ユーラシアで得られたフラックス観測データと衛星リモートセンシングデータを活用し、温室効果気体フラックスの挙動を気候変動にともなう季節変動特性変化や経年変動に着目して解析する。北モンゴル・カラマツ林用の海外寒冷地向けフラックス観測システムを、現地のフラックス観測タワーに設置する。陸域モデル班は上述した研究実績内容を国際学術誌に投稿し、公表することを目指すとともに、水循環統合モデルの改良を進め、将来予測データを活用して温暖化環境下での陸水の挙動を解析するための準備を開始する。また統括班が作成する湛水域マップを用いることで、並行して開発中の陸域生態系物質循環モデルにより、北ユーラシアにおけるメタン放出量の推定を行う。大気班は、水蒸気トレーサーモデルを用いて秋季から初冬季の北極海起源水蒸気の挙動を解析する。将来予測データも活用し、温暖化と北極海氷縮小にともなう北極海起源水蒸気の挙動を解析する準備を開始する。また、大気再解析データを活用し、北ユーラシアにおける温帯低気圧に影響を与える総観規模波動擾乱の統計的分類を試み、降水システムの経年変動特性を明らかにする。統括班は、データフュージョン技術をもとに、湛水域マップの改良・検証・拡張を行う。また、植生変化域マップについてもデータフュージョン技術の活用を試みる。PAWCs月例オンラインセミナーを継続し、研究分担者間で研究の進捗状況を定期的に共有する。現地研究者とも定期的にオンラインで研究打合せを行うとともに、2023年3月6日~10日に開催予定のISAR-7(Seventh International Symposium on Arctic Research:第7回国際北極研究シンポジウム)で、研究の進捗状況を共有する。
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評価記号 |
中間評価所見 (区分)
A-: 研究領域の設定目的に照らして、概ね期待どおりの進展が認められるが、一部に遅れが認められる
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