研究課題/領域番号 |
19K00056
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
古橋 紀宏 香川大学, 教育学部, 准教授 (90832296)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 鄭玄 / 歴史観 / 史記 / 世本 / 大戴礼記 / 緯書 / 皇甫謐 / 帝王世紀 / 偽古文尚書 / 孔安国伝 / 鄭沖 / 王粛 / 明帝 / 群書治要 / 通人 / 王朗 / 王充 / 肉刑復活論 / 後漢 / 魏晋 / 周礼 / 周制 / 経書解釈 / 魏晋南北朝 |
研究開始時の研究の概要 |
中国の魏晋南北朝時代は、国家制度の中に、儒教の経書に記された周王朝の制度が取り入れられた時代である。当時の国家制度に対して経書が及ぼした影響を正確に把握するには、当時の経書解釈学において有力であった後漢の鄭玄の説を解明することが必要である。鄭玄説の特徴は、経書の一つである『周礼』を基準として、経書間の矛盾を解消しようとするものであった。本研究は、鄭玄によって『周礼』を中心として構築された体系的な周制解釈の全体的構造を明らかにしようとするものである。
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研究実績の概要 |
本年度は、鄭玄説と『偽古文尚書』の関係を明らかにするため、鄭玄説の特徴とその影響を、歴史観を中心に考察し、以下の研究成果を発表した。 漢代から三国時代には、上古史について多様な歴史観が並存していた。その一つは『史記』の歴史観であり、五帝をすべて黄帝の子孫とするもので、『世本』や『大戴礼記』帝ケイ篇も同様の歴史観を共有していた。この歴史観は、漢代の古文学派によって継承され、その間、前漢末の劉キンや後漢末の宋忠による増補を経て、西晋の皇甫謐『帝王世紀』に採用された。『帝王世紀』では、黄帝が炎帝(神農)の子孫に勝利して帝王となった後、黄帝の子孫である少昊(青陽)・センギョク・コク・摯・堯・舜・禹が一代ずつ帝位を継承したとする。一方、緯書の歴史観はそれとは全く異なり、代表的な『春秋命歴序』では、炎帝・黄帝・少昊・センギョク・コクはそれぞれ王朝の始祖となり、その帝位はそれぞれ八代・十代・八代・二十代・十代にわたって世襲されたとする。そのほかにも、黄帝と炎帝を兄弟とする虞翻・唐固の説や、炎帝と神農を別人とするショウ周の説があった。 それらの多様な歴史観の中で、鄭玄説は、緯書の歴史観を基本としつつ、炎帝と神農を同一の帝王とする劉キン説をも踏襲したものであった。三国時代の魏において勅命によって行われた張融の評定では、緯書や鄭玄説で語られる黄帝の玄孫「帝魁」を根拠として『史記』や『大戴礼記』の記述が否定されており、これは、魏において緯書・鄭玄説の歴史観が公認されたことを示している。 一方、三国時代の蜀では、鄭玄説とは異なり、益州の伝統的な讖緯の学の立場から『史記』や劉キン説の歴史観が否定された。 このような中、『帝王世紀』が『史記』や劉キン説の歴史観を基本として統一的な上古史を構築したことは、その歴史観を共通認識として定着させ、当時の多様な歴史観を収斂させることにつながったと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、鄭玄説の中でも、特に『偽古文尚書』およびその孔安国伝との関わりが推測される歴史観の問題が考察の中心となった。一方において、礼学に関する考察は、幅広く進めることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の考察の結果、鄭玄説の特徴の一つとして歴史観があり、その歴史観は、三国時代の魏においては影響力を強めたものの、その後、『偽古文尚書』との関係性が伝えられている皇甫謐の著『帝王世紀』においては、影響力を弱めていることが明らかとなった。これは、礼学に関する鄭玄説の影響力の推移と同一の特徴を示している。このことから、鄭玄の礼学説は、鄭玄の歴史観と一体のものとして変遷したことが推測される。そのため、歴史観についても引き続き考察を加え、鄭玄説と『偽古文尚書』との関係をさらに解明していく予定である。
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