研究課題/領域番号 |
19K00594
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
柳田 優子 筑波大学, 人文社会系, 教授 (20243818)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | アラインメント変化 / 非典型的格標示構文 / 心理動詞 / 格変化 / 与格主語 / ヴォイス / 心理述語 / 使役交代 / 格システム / 格システムの変化 / ヴォイス交替 |
研究開始時の研究の概要 |
言語類型論、生成文法理論の観点から日本語における心理使役交替と呼ばれる現象に関してコーパスを用いて上代語から現代語まで調査する。この交替にヴォイスが関係していることを提案する。統語的には、この交替がVoicePによりライセンスされ、Voiceの変化が格システムの変化のトリガーになるという仮説をコーパスを用いた広範なデータを使用し実証研究を行う。
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研究実績の概要 |
本年度は、2つの研究課題から研究を進めた。1)言語類型論の視点から見た日本語のアラインメント変化:現代日本語は典型的な主格・対格型(以下、対格型)言語であるが、上代日本語(8世紀頃)は、言語類型的に活格型とよばれる格システムの特徴をもつ。主語を標示する「ガ」は現代語では主格であるが、上代日本語では名詞句の所有者あるいは名詞化節の主語を標示する属格でありその形態的、意味的、統語的特徴は活格の振る舞いをする。すなわち日本語ではアラインメントが活格型から対格型へと変化したことになる (Yanagida and Whitman (2009)参照)。アラインメント変化の研究は歴史資料が存在するインド・イラン語派の能格から対格型への変化の研究が最も重要な役割を果たしてきた。インド・イラン語派では、アラインメント変化の起源は、史的ヴォイス交替(i.e.,受動態から能格型他動詞への変化)であるというのが有力な説になっている。こうした言語類型論の観点から、日本語史におけるアラインメントの変化がなぜ起こったかを調査するため、8世紀から16世紀にかけての広範な歴史資料を調査し実証研究を進めてきた。2)非典型格表示構文の出現:歴史資料(特に室町時代の狂言)の調査から「非典型的格標示構文」は、アラインメント変化の付帯現象として16世紀以降に出現したことを示した。またインド・イラン語派の非典型格標示構文の特徴を調べ、インド・イラン語派の非典型的格標示構文の出現にアラインメント変化がどのように関係しているかについて先行研究を精査し、非典型標示構文の出現とアラインメント変化の類型的比較研究を行い、言語変化の普遍性と個別性について考察した。本研究はJournal of Historical Linguisticsにて出版された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在までの進捗状況は遅れている。当初計画した、海外研究者との共同研究や研究発表がコロナ禍のため、ほぼ全てが中止になったため。海外渡航もできる状況になかったので、当初の研究計画を変更せざるを得なかった。また、授業などが全てオンラインになったため、相対的に学内業務や授業のエフォートが上がり、研究に費やせる時間が少なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
インド・イラン語派の格変化と日本語の比較研究を行う。能格型他動詞は受動態に起源があるという多くの研究がある。このように格変化はヴォイスの変化がトリガーになることが知られている。今年度は、引き続き、上代から近世までの歴史資料を広範に調査し、日本語における格システムの変化とヴォイスの関係を詳細に調査し、日本語における変化を日本語独自の変化としてではなく、言語類型論の視点から記述するための実証研究を行う。
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