研究課題/領域番号 |
19K01152
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03070:博物館学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪 |
研究代表者 |
石田 惣 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪市立自然史博物館, 主任学芸員 (50435880)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 自然史標本 / 沖縄戦 / 標本記録 / 生息地推定 / 保全 / 科学史 |
研究開始時の研究の概要 |
貴重な生態系を擁する沖縄は、返還以降の急速な開発によって危機的な状況にあります。その保全を進める上で、博物館の生物標本が役に立ちます。標本からは過去の生物の分布記録がわかり、その地域の本来の自然環境の推定を行うことができます。この研究では、アメリカの複数の博物館が収蔵する占領統治期の沖縄で採集された標本に着目し、標本記録の集約・リスト化と、特に沖縄戦期の標本収集活動の実態を調べます。さらに、得られた標本記録から当時の自然環境の推定を行い、現状との比較を行います。これにより、沖縄の未知の生物多様性情報の発掘と公開、科学史への新たな知見の追加、沖縄の自然環境の保全に資することを目指します。
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研究実績の概要 |
2022年度(4年目)はアメリカ国内の博物館・公文書館での実地調査は見送ることとし、(1)沖縄産カワザンショウガイ科の標本調査、(2)沖縄戦で米軍人が採集した標本の地名の特定、(3)絶滅種リュウキュウカワザンショウの生息環境の推定、(4)沖縄産カワザンショウガイ属標本からのDNA抽出の試行を行った。 (1)では、貝類コレクションの多いアメリカの主要数館(Bailey-Matthews National Shell Museum、ロサンゼルス自然史博物館、Burke Museumほか)、及びアメリカ国内の無脊椎動物標本の統合データベース(Invert E Base)など複数の標本データベースを検索し、1945年から返還期までの標本情報をリスト化した。また、国立科学博物館から沖縄産カワザンショウガイ属標本数点を借用し、同定及び撮影を行った。 (2)では、沖縄戦の上陸作戦用に作られた米軍戦術地図(Army Map Service L-891)で表記された地名が、米軍人採集標本のラベルの地名と一致することを見いだし、一連の調査標本の産地特定を行った。 (3)では、リュウキュウカワザンショウの標本採集地を(2)に基づいて特定し、文献、GHQ作成地図(Army Map Service L-893)、空中写真、及び現地調査により当時の生息環境の再現を試みた。また、水田面積の縮小による本種個体群への影響について検討した。 (4)では、大阪市立自然史博物館所蔵の1950年代採集の沖縄産カワザンショウガイ属標本より、DNAの抽出とMIG-seq法による集団構造解析の試行実験を行った。その結果、得られた塩基多型情報は新鮮な標本で期待される量の30分の1程度であったが、本州の近縁種との遺伝的差異を検出することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度に引き続き新型コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限が当年度前半まで続いたため、アメリカ国内での博物館収蔵標本及び資料の追加調査を見送ることとした。標本調査については借用によりいくつか進展があった。また文献資料による調査を優先させたことにより、採集地名の特定などで大きな進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は沖縄諸島で絶滅したとされているリュウキュウカワザンショウについて、現存する標本からのDNA抽出を試みるとともに、近縁種との系統解析を行い、本種の系統的地位について検討を行う。また、その結果によっては記載を行うことも検討する。比較用の近縁種のサンプル収集のため、長崎県平戸市、鹿児島県西之表市、奄美大島での採集を計画している。また、リュウキュウカワザンショウの標本記録について引き続き国内外の博物館での収蔵状況調査を継続する。記載を行わない場合でも、推定される本種の生息環境についてとりまとめ、論文化を検討する。 また、米海軍第2医学研究部隊(NAMRU-2)の沖縄における活動記録を探索するため、米国立公文書館での資料調査を検討する。現時点では関連文書の所在調査を進めており、その結果により訪問調査を行うかどうかを決定する。併せて、沖縄戦期に採集された標本が比較的多く収蔵されているハーバード大学比較動物学博物館での標本調査も検討する。 ここまでに得られた沖縄戦期の採集標本群について、ある程度分類群がまとまっているもの、あるいは特定の地域の生物相推定に資する標本記録を対象にリストを取りまとめ、出版することを検討している。また、米軍戦術地図の表記地名が標本ラベルの地名と一致するという成果に関しても、論文化を進める予定である。
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