研究課題/領域番号 |
19K01248
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 名古屋大学 (2020-2023) 岡山大学 (2019) |
研究代表者 |
波多野 敏 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (70218486)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | フランス法制史 / フランス革命 / 社会契約 / 連帯 / 社会法 / 連帯主義 / リスク / 労働者 / 法的主体 / 法制史 / 西洋法制史 / フランス法史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、フランス革命期以降の法システムを、社会契約論の再構成を通じた「社会」という観点から統一的に把握し、この「社会」の観念を基盤に、「意思」を持った「法的主体」が構成されることをあきらかにする。フランス革命期の「社会法」的な実践は、一般に考えられている以上に、新しい「社会」形成に不可欠の要素であったことを示し、19世紀末の「社会法」理論の系譜を革命期の理論にさかのぼって明らかにする。その上で、社会契約論とその再構成が18世紀末と19世紀末の二つの理論を結びつける鍵となっていることが示され、ヨーロッパ近代法の教義学的規範構造が明らかにされる。
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研究実績の概要 |
今年度は、社会契約論を基礎とした革命期の法的構成が19世紀を通じて変化していく様相を考察したが、これによって以下の点が明らかにされた。 前年度までの研究で、革命期の法的主体が自立した意思を持った存在として構成され、そのことが奉公人など自らの意思を持たないものを法的主体として認められないことにつながったことが明らかにされた。19世紀の労働運動などは、革命期に排除された主体を法的主体として承認することを求め、世紀中頃から徐々にこうした存在が法的主体として認められるようになるが、その際には、革命期に考えられたような「自立した意思」を基礎にすることは困難となる。 世紀末の連帯論では、法的主体として承認されるために実際に自立した意思を持っていることは必ずしも前提とされず、代わって、人間は社会の中で自らの意思に関わらず、すでに相互に依存した存在として捉えられるようになる。ここでは自らの意思によらず。自分が社会に負っている負債から法的な義務が生じてくると考えられる。こうした関係は「準契約」として整理され、現実の合意はなくとも、構成員が自由かつ平等な条件で協議した場合に到達するであろう仮想的な合意が想定され、これによって法的に強制力を持った措置を取ることが可能となる。 他方で、革命期の法律もルソー的な一般意志の表明であると考えられており、これもまた現実の意思の一致ではないという点でこうした連帯論との共通性を持っていることを考えると、革命期の法律が現実の意思を基盤としていると考えることはミスリーディングでもある。世紀末の連帯論は社会法の基礎となるが、革命期の古典的自由主義の法律との違いを強調するよりも、その共通性を考えることで近代法の基本的な特徴を捉えることができる。
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