研究課題/領域番号 |
19K01320
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
石堂 典秀 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (20277247)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | スポーツガバナンス / オリンピック / 人権規範 / 腐敗・贈収賄 / インテグリティ / 人権保障 / 暴力 / ハラスメント / 通報窓口 / 比較法研究 / ビジネスと人権指導原則 / オンラインハラスメント / 人権デユーデリジェンス / スポーツ法 / 国際人権法 / アスリートの権利 / 子どもの権利保護 / 国際スポーツ法 / メガスポーツイベント / グリーバンスメカニズム / 人権デューディリジェンス |
研究開始時の研究の概要 |
グローバルなスポーツ法の世界においては、国際スポーツ団体は国際オリンピック委員会 (IOC)を頂点に自らの自治的な法規範を形成してきている。現在、IOCや国際サッカー連盟(FIFA)などの国際スポーツ団体はオリンピックやワールドカップにおいて、人権を配慮するように開催都市契約に盛り込む動きがでてきている。強力な執行力を有する国際スポーツ法の世界において、国際人権規範を遵守させる動きは成功するのであろうか。人権デューディリジェンスを担う様々な関係機関や団体への調査を通じ、この新たな試みを多角的に分析する。
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研究実績の概要 |
東京オリンピック・パラリンピック2020大会を終えて、大会組織委員会理事による贈収賄事件が発覚した。なぜこのような事件が発覚したのであろうか。理事を監督するシステムや人物がいなかった等の制度的問題が指摘されるが、この事件は防止することができなかったのであろうか。2002 年ソルトレークシティー冬季五輪の招致過程で、複数のIOC 委員が賄賂を受けたことが発覚した。これを契機に、 IOC は、倫理規程や倫理委員会を整備してきた。多くのIF の規程がIOC 倫理規程に基づいた倫理規程を整備している。IOC は2009 年に「オリンピックムーブメントにおけるグッドガバナンスの普遍的基本原則」を定め、加盟団体に対して同原則の採用を求めている。同原則の中では、スポーツ団体に対して、IOC の倫理規程に従い、倫理原則や規則を採用することを求めている。具体的には、倫理委員会の設置、腐敗防止・利益相反ポリシーの作成、契約や調達契約の適切な管理ポリシーの作成、競技の不正操作、セーフガーディングへの取り組み、通報窓口の設置等が求められている。国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、国際社会で注目される人権課題として、「児童労働・強制労働」、「外国人労働者」、「環境と人権」の他に、「腐敗・贈収賄と人権」も重要な課題として認識されてきている。これは、その国の社会全体の腐敗を助長することに加え、企業にとっても、成長を阻害し、競争を歪めるほか、深刻な法的リスクや風評リスクとなる危険性があるからである。このようなグローバルなスポーツ界の状況について、報告を行った(「スポーツイベント・スポーツ団体における腐敗防止の実現」日本スポーツ法学会第31回大会及び「オリンピックのインテグリティと不正防止」日本体育・スポーツ政策学会第33 回大会)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、IOCや国際サッカー連盟(FIFA)などの国際スポーツ団体はオリンピックやワールドカップにおいて、人権を配慮するように開催都市契約に盛り込む動きがでてきている。本研究では、強力な執行力を有する国際スポーツ法の世界において、国際人権規範を遵守させる動きは成功するのであろうか。人権デューディリジェンスを担う様々な関係機関や団体への調査を通じ、この新たな試みを多角的に分析することが目的であった。東京オリンピック・パラリンピック大会終了後の不祥事は、そのような世界的な動向の中で発生したものであり、日本のスポーツにおける贈収賄対策が十分に行われていなかったことに起因するものであったといえる。今後、スポーツ界におけるビジネスと人権に関する指導原則の導入・実施が求められる歴史的に象徴的な事件であったと考える。また、この事件に関連して、スポーツ団体に対する監査制度の在り方についても改めて検討していく必要があると考えられる。以上のことから、順調に研究が進行しているものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
国連「ビジネスと人権に関する指導原則」によれば、企業は、人権を尊重する責任を果たすために、その規模及び置かれている状況に適した方針及びプロセスを設けるべきであるとして、①人権を尊重する責任を果たすという方針によるコミットメント、②人権への影響を特定し、防止し、軽減し、そしてどのように対処するかについて責任を持つという人権デュー・ディリジェンス・プロセス、③企業が引き起こし、または助長する人権への負の影響からの是正を可能とするプロセスの制度化を求めている。すなわち、人権ポリシーの制定、人権リスクの特定、人権デュー・ディリジェンスの実施、人権救済措置の実施といったことが求められている。本研究では、スポーツ団体がこのような人権DDプロセスを実施するためには具体的にどのような方策が求められるのかを検討することにある。まず、いわゆる人権ポリシーとはどのようにあるべきなのか、スポーツ界における人権ポリシーのあり方について検討し、スポーツ界における人権リスクを特定し、予防・軽減していくための取り組みが必要となってくる。特に、スポーツ界では、①不正経理等、②組織内の内部対立(役員改選、会議不開催など)、③業務運営上の問題(内部ルール違反、代表選手選考問題)、④スポーツ団体の懲罰、紛争解決に問題がある場合、⑤スポーツ団体の会計処理に問題がある場合、⑥情報隠蔽、説明責任違反、⑦暴力・暴言・体罰・いじめ、⑧パワハラ・セクハラ、⑨ヘイトスピーチ・侮辱等、⑩アンチ・ドーピング、⑪八百長、⑫スポーツ事故、⑬スポーツ団体の役職員、選手・指導者による刑事事件(①暴行事件、②未成年の飲酒・喫煙、③違法賭博など)など数多くの不祥事案件が発生している。これら問題を人権リスクとして認識し、予防・対処するためのスポーツ界における人権リスクマネジメントのあり方について調査研究する予定である。
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