研究課題/領域番号 |
19K01414
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
木村 仁 関西学院大学, 法学部, 教授 (40298980)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 民事信託 / 専門家 / 信託 / 後見 / アメリカ法 / 意思決定支援 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、高齢者の財産管理制度として、信託と後見制度の適切な併用が促進されるために、①後見人が信託に係る権限を行使できる範囲、②受益者と委託者の後見人が権限を行使できる範囲の調整、③後見人が受託者、信託監督人または受益者代理人を兼任することの可否、そして、兼任を認める場合における受託者に対する実効的なモニタリングのあり方について、アメリカ法、カナダ法およびオーストラリア法の実際的な運用および理論上の検討状況を参考にして、信託と後見制度の安定的な協働の仕組みを提示するものである。
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研究実績の概要 |
2022年度は、民事信託に関与する専門家、とりわけ弁護士などの法律専門家が、民事信託の設定時および存続中において果たすべき役割や留意すべき点について、信託の当事者支援という観点から研究を行った。 信託を利用すれば、成年後見や遺言と比べて、多様、柔軟かつ確実な財産管理や財産承継が可能になる反面、委託者本人の制度上の保護は手薄である。特に信託法は、私的自治の範囲を広く認めており、多様な内容決定を可能にしているが、高齢の委託者が子などの親族受託者に誘導され、委託者の真意でない信託が設定されてしまうおそれがある。また一般的な監督制度も存在しないため濫用に弱い。 したがって、民事信託の設定においては、弁護士などの法律専門家が、①委託者の意思能力があること、②信託設定意思があること、③信託行為の定めが公序良俗・強行規定に反しないことを確認しなければならず、また、④監督体制構築を助言し、⑤信託口座開設に向けて協力することが望ましい。さらに、信託存続中において法律専門家は、⑥受託者の円滑な信託事務処理を支援し、⑦委託者または受益者が、信託の変更権または終了権を行使する際には、その意思決定を支援することが求められるというべきである。 また、民事信託の担い手として専門職受託者を拡充するために、信託業法を改正することも検討する余地がある。 以上の点を述べた研究成果を、「年金と経済」42巻1号(2023年)に公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、民事信託の設定および存続中において、法律専門家が果たすべき役割や留意点を検討し、その研究内容をまとめた論稿を公表することができたので、計画はおおむね順調に進展しているといえる。 他方で、これらソフトローに対して、民事信託の設定に関与した専門家は、いかなる場合にいかなる法的義務を負うかについては十分検討することができなかった。今後の課題としたい。
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今後の研究の推進方策 |
民事信託の設定に関与した専門家の助言義務違反を認めた下級審判例が現れている。その判例内容を検討したうえで、民事信託に関与する法律専門家がいかなる場合にいかなる民事責任を負うかという点につき検討したいと考えている。 また、暗号資産を信託財産とすることができるかという点についても、日米の法を比較しつつ検討することを計画している。
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