研究課題/領域番号 |
19K02470
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09010:教育学関連
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
青木 香代子 茨城大学, 全学教育機構, 准教授 (00793978)
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研究分担者 |
森茂 岳雄 中央大学, 文学部, 教授 (30201817)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2019年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 多文化教育 / 社会正義のための教育 / 抑圧 / 特権性 / 批判的教育学 / 日本人性 |
研究開始時の研究の概要 |
アメリカを中心に研究・実践されている社会正義のための教育は、抑圧構造を理解し、批判的思考を促し、社会行動のためのスキルを身に付けることを支援するものであるが、これまでに展開されてきた多文化教育に対する批判に応えるものとして示唆に富む。日本においても、マジョリティの特権性を脱構築し、抑圧に対抗するための行動を起こすことを支援する社会正義のための教育の理論的研究及び実践の開発が急務である。本研究では、社会正義のための教育に関する理論及びその実践方法の研究とカリキュラムの分析、研究者や実践者を対象とするインタビュー調査を行う。また、日本における社会正義のための教育のプログラム開発、実践、検証を行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、これまで文化的差異に関する多様性に焦点があてられがちであると指摘されてきた多文化教育を批判的に捉え、あらゆる差別・抑圧に対して行動していくための知識とスキルを身につけることを支援する社会正義のための教育(Social Justice Education, 以下SJE)に着目し、その理論的研究及び実践開発を行うものである。これまで本研究では、SJEにおける理論の検討や、アメリカの高等教育、及び小学校で教鞭をとっている教師へのインタビュー調査等を通して実践における課題について検討した。さらに、2022年度は、研究代表者の青木が担当している授業の批判的検討から、マイクロアグレッションに焦点をあてた授業実践を開発した(青木2023)ほか、SJEのスタンダードの分析を行い、SJEの教師教育における課題を示した(森茂・青木2023)。 2023年度は引き続き、アメリカにおける社会正義のための教育実践の研究を進め、特権性を持つ教師がどのようにSJEを実践できるかについて検討した(青木、2024)ほか、抑圧の具体的な分析を通した実践開発を行った(青木、2024出版予定)。また、引き続きSJEの実践開発に向けて、特にエスニック・スタディーズや、教師教育、インターセクショナリティに焦点をあて、アメリカの高等教育及び小学校においてSJEの実践に関わってきた教育関係者へのインタビューと学校訪問を行った。 2023年度を最終年度の予定であったが、共同研究者が続けられなくなってしまった事情があり、2024年度はこれまでの研究をまとめて報告を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、これまでの多文化教育に対する批判的検討及びSJEにおける基本的な理論を整理した。2020年度は、SJEにおける理論に特に関連性の強い理論、具体的には批判的人種理論やブラック・フェミニズム、インターセクショナリティ、ホワイトネス研究等を検討し、アメリカの高等教育における実践と課題を考察した。2021年度は、SJEのスタンダードの検討を行うと同時に、アメリカの小学校においてSJEを実践している教師へのインタビューから、SJEにおける理論と実践の課題について検討した。2022年度は、青木の担当する授業におけるSJEの実践として、特にマイクロアグレッションを取り上げ、身近に起こりうる差別であるマイクロアグレッションの批判的分析やその対応について考える授業構想を提示した(青木2023)。そして2023年度は、引き続き、青木の担当する授業におけるSJEの実践の検討として、これまで学校教育で行われることの多かった「ちがいのちがい」のアクティビティに参加した学生のインタビューを分析し、抑圧を具体的に分析できるようにするための概念を紹介したうえで、新たな授業改善案を提示した。(青木2024出版予定)。 これまでの研究成果をまとめる予定であったが、2023年度末に共同研究者が続けられなくなってしまったという事情により、研究期間を延長して、2024年度にこれまでの研究をまとめ、報告書を作成する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度、2022年度は新型コロナウイルスの影響により調査のための海外渡航が難しく、研究期間の延長を申請した。2023年度には9月と2月にカリフォルニア州サンフランシスコ・ベイエリアにおいて調査を行うことができたが、いずれも調査期間は短く、他の調査地に行くことができなかった。しかし、複数回にわたる学校訪問やインタビュー等により、これまでの研究成果をまとめるための調査はできたと考える。 そのため、2024年度を最終年度とし、これまでの理論的研究、及びカリキュラムの検討・整理を行うとともに、これまでに行ったインタビュー調査をまとめた報告や授業構想をまとめ、異文化間教育学会等において研究発表を行い、参加者やインタビュー協力者からの助言を得て報告書を作成する予定である。
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