研究課題/領域番号 |
19K02798
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09040:教科教育学および初等中等教育学関連
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
上田 孝俊 武庫川女子大学, 教育研究所, 嘱託研究員 (30509865)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 災害トラウマ / ナラティブ的探究 / 応答的生徒指導 / 援助意識の形成 / パイダゴーゴスとしての教師 / 生徒のナラティブの自認 / 援助意識の形成過程 / 生存罪責感情 / 援助精神の自己内化 / 学校物語(ナラティブ) / 震災教育の基盤となる教育実践 / 発達・学習保障とケア / 家族の離散 / セルフの解体 / 支援とカタルシス / 教師の震災体験の風化 / 教育的病理の理解 / 育ちの情報 / 保護者との対話と共感 / 指導の方向性 / 子どものナラティブ / 回復過程 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要は、大震災やそれに伴う環境の変化から子ども・若者が被るトラウマ(心的外傷)の事実を調査し、トラウマからの回復過程に必要な援助を特に学校教育における実践から検討することである。被災直後は、子ども自身、変調や多様な生きづらさを感じていても、それが何に起因しているのかを自ら理解することは困難である。教員らの長期にわたる関わりや実践が、トラウマの個々の人生における多様な意味(ナラティブ)を探り、自己肯定と回復へとつながる過程および段階的な課題は何かを明らかにする研究である。
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研究成果の概要 |
東日本大震災は、子ども達にとって、突然の家族の死、友人などとの人間関係の遮断、地域や生活史の風景の消失など、個々の人間が存立を感じる基盤を崩した。教師は、言語化できない感情を含めたナラティブを、絵画・ジオラマ・身体表現・生活綴方・地域学習といった教育方法を援用し、子どものトラウマの内実に迫った。応答的な実践の鍵となったのは、教師自身のナラティブの自覚であり、それが教育実践思想を「自己内化」(ヘーゲル)させた。すなわち援助者に「生存罪責感情」(ヴァレント)を生じさせ、子どもを敬愛し、理解を複層的なものにした。教師や仲間に支えられるということが子どものナラティブを回復的なものに書き換えていく。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
災害から受けた児童生徒のトラウマは、教師や親・援助者がその内実を理解する知識と姿勢によって、そして仲間たちからの心の理解と受容によって回復過程をたどることができる。生徒指導はこの回復過程に応答し教科学習やその他の学習として構成されなければならないことを東日本大震災被災地での教育実践の探究や教師・保護者、生徒へのインタビューから明らかにした。震災トラウマに限らず虐待・いじめなどによるトラウマに対しても、心理的ケアと同時に教科学習と「心」の問題を連結させた実践の開拓が必要となる。そのために教師の援助職者としての生存罪責感情や援助思想・精神の「内化」「外化」の螺旋的意識形成が問われる。
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