研究課題/領域番号 |
19K03122
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分09080:科学教育関連
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
石井 恭子 玉川大学, 教育学部, 教授 (50467130)
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研究分担者 |
山田 吉英 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 准教授 (30588570)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | カリキュラム / 科学教育 / 概念理解 / 協働研究 / 小中高大 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、小中高大理科教員の協働研究組織(Professional Learning Community)を生かし、教科と学校種を超えた教員主体のカリキュラム開発がどうしたら可能になるか、組織的継続的に授業研究や授業実践検討を行い、深い概念理解を目指すカリキュラム開発の実践研究を行うものである。日本の学校教育においては、学習指導要領によって学習内容が決められてきているが、学校現場主体のカリキュラムマネジメントの必要性も指摘されている。教科や学校種を超えた協働研究組織、児童生徒の科学的概念形成プロセスや幅広いカリキュラム編成理論を踏まえた実践研究を継続し、カリキュラム開発を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、児童生徒が科学的な概念を理解する授業カリキュラムを教員自身が開発するための組織や方法を理論的実践的に検討するものである。2022年度は、以下の3点について、理論的実践的研究を進めた。 (1)概念構築を目指すカリキュラムの調査研究 研究代表者は、主に日本の1960年代の小学校低学年教科書を検討し、光の直進や屈折、重心や質量、電流や回路などの概念構築におけるあそび経験に着目した。こうした低学年期の体験活動は、中学高校での物理概念の基礎となるにかかわらず現在の日本における理科の教育課程には含まれていない。今後さらにこれらの関連について検討していく。研究分担者は、これまで行ってきた概念理解のための教育プログラム等の検討結果を統合し、現在の日本のカリキュラムの課題について研究の視点をシフトし光の概念獲得プロセス等について新たな研究に着手している。両者とも調査研究と同時に教員養成大学生に対する実践や調査を行なった。 (2)学校拠点での省察的実践 小中学校と大学教員養成課程における実践について、実践者自身の省察と教員コミュニティでの協働省察、また生徒自身の省察にもとづいて検討した。概念の形成においては、科学の法則と実生活における直感的な理解を結びつけることが重要であり、多くの実践でそれらをつなぐことによって理解が高まることを明らかにした。また、研究協力者は「しくみを解明し自然観を広げる」をテーマとする日々の実践から生徒の探究プロセスとそれに伴走し概念獲得を支える教師の役割を明らかにし、カリキュラム開発に取り組んでいる。 (3)実践記録の蓄積と構造化、評価と改良 研究協力者は共同メンバーによる省察にもとづいて日々の実践を記録化しており、公開研究授業や研究紀要等で実践を公開している。研究代表者と共同研究者も、研究成果に基づき概念形成に着目した実践を行い記録化している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
概念構築を目指すカリキュラム研究については、これまでの理論的背景を検討した他、大学生を対象とした概念調査や授業分析等を行い実践研究を進めた。並行して、小学校、中学校高等学校および教員養成大学における授業実践の交流を再開した。 研究分担者が進めてきた「断片知識論(p-prim論)の活用に関する研究」によって、p-prim論の複雑さと授業実践の複雑さの両方が顕在化されることとなり、理論研究をそのまま実践に適用することは簡単ではないことが明らかになった。そこで、p-prim研究を一区切りし、概念理解を目指す理論を踏まえた実践研究に重点を移し「物理理解の知識構造の複雑さに関する研究」及び「中学校理科の幾何光学、その問題点」を発表した。研究代表者は、概念形成の基本となる乳幼児期の遊びに着目したほか、研究協力者の実践から授業における教師と生徒のやりとりにおける概念構築プロセスのヒントを得て、カリキュラム化を目指している。 実践研究については、研究協力者を中心に日々の実践を蓄積し、教師のカリキュラム構築の視点と学習者である児童生徒の概念獲得プロセスの視点から検討している。福井大学附属義務教育学校を中心に「しくみを解明し自然観を広げる」をテーマとする化学変化の現象に向き合う生徒の探究プロセスとそれに伴走し概念獲得を支える教師の役割を明らかにしている。 2022年度も新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が続き、コロナ対策等による校務増加が続いたため、理論的実践的研究は東京と福井の拠点それぞれで進めた。2つの拠点を往復して対面で授業研究会や教材研究会を開催することは困難な状況であったため、オンラインや文書のやり取りで授業研究や教材研究などの小さな研究会を行った。また、国内外の学会参加も見合わせることが多く、研究成果をまとめ、公表することを最終年度の課題とし、研究期間を延長している。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行拡大の影響は大きく、研究促進が困難であるが、SNSやzoom等オンラインによる情報共有をさらに進め、研究成果を以下のようにまとめていく予定である。 (1)概念構築研究を理論的実践的に進め、断片知識論(p-prim論)やその他PER(Physics Education Research)、および幼児期の物理的体験(Physical-Knowledge Activities)についての研究から得た知見をまとめる。 (2)小中高の教員との協働研究組織を生かし、児童生徒の実態と学習指導要領の連続性を踏まえた概念理解と探究力育成の物理カリキュラムの事例を集約し、まとめる。 (3)試行カリキュラムを用いた実践を検討し、学会等で報告し研究のまとめを公表する。
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