研究実績の概要 |
[最終年度の研究実績概要] Semmelmann氏と国際共同研究を実施し,四元数ケーラー多様体のアインシュタイン計量の無限小変形理論について研究を実施した.ワイゼンベック公式や固有値評価を適用し様々な結果を得たが,グラスマン多様体を除いて剛性定理が成り立つという予想の証明には至っておらず,それは今後の課題である.アインシュタイン計量の無限小変形はラリタ・シュインガー場や捻じれディラック作用素とも深く関連している.また,10/19~10/21の3日間にGlobal Analysis and Geometryという国際研究集会を主催し,国内外の多くの研究者と研究交流を行った. [研究期間全体での研究実績概要] 3編の共著論文が学術雑誌に掲載された,うち1編は国際共同研究による.それらの内容は以下のよう.(1) 対称空間上でのラリタ-シュインガー作用素の固有値計算の手法を確立し,複素射影空間及び四元数射影空間上ですべて固有値を計算した.(2) 定曲率空間上での高階スピンのディラック作用素に対する調和解析に成功した.k+1/2階スピンのスピノール場の全体をk+1/2,k-1/2,k-3/2,,..,1/2の階層に分解でき,本質的な部分はツイスター作用素の零固有空間に含まれることを証明した.その応用として,ラプラス作用素のk乗が高階スピンのディラック作用素を因子としてもつことを示す因数分解公式を与えた.また,球面上で幾何学的2階微分用素の固有値をすべて計算した.(3) 実グラスマン多様体Gr(2,n)上の調和解析を行い,不変微分作用素であるケーリー・ラプラス作用らがHiggs代数というsl(2)の2次変形代数をなすことを明らかにした. また,学会での研究成果発表や国際研究集会の開催をすることで,ラリタ・シュインガー作用素を用いたスピン3/2幾何学の普及に努めた.
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