研究課題/領域番号 |
19K03499
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
石川 昌治 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (10361784)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 特異点 / 多面体 / 3次元多様体 / 4次元多様体 / 無限遠の特異点 / 2次元結び目 / 接触構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,Turaevのshadowや3次元多様体のflow-spineに着目し,多様体上のファイバー束構造とその境界に現れるオープンブック分解および接触構造の研究についての新しい枠組みを,多面体を軸に構築する.Shadowやspineは,多面体の組み合わせ的構造を利用して,3次元空間や4次元空間の表示を与える手法である.各面に向きの構造を入れることで,安定写像のStein分解や3次元多様体のflow-spineといった,より豊富な構造との対応を与えることができる.さらに詳細な情報を与えることで,レフシェッツ束や接触構造などのより深い幾何構造との対応を与えることが研究の目的である.
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研究実績の概要 |
多項式写像の無限遠の特異点の研究を進め、実多項式写像について、写像がある値の近傍でSerre fibrationになることを判定する際には、その点から延びる弧に沿ってSerre fibrationになることを確認すればよいことを示した。多項式写像のtarget spaceは無限遠の特異点に合わせて有限個の滑層(strata)に分割できることから、Serre fibrationであるかを判定する際には、本来であれば近傍全体でのファイバー性を確認する必要があるが、実際には有限個の弧の上で確認すればよいことが分かる。さらに、多項式写像の例の構成の研究を行い、無限遠への消滅成分がなく、ファイバーのBetti数も変化しないが、無限遠の特異点をもつファイバー束を、実多項式写像をある弧の上に制限することで構成した。 また、球面上の円作用の研究に着手し、4次元球面上の円作用で不変となる2次元結び目についての研究を進めた。この結び目はbranched twist spinと呼ばれる。Branched twist spinは1次元結び目を4次元空間内で回転させることで構成されるが、2次元結び目の分類の観点から、1次元結び目が異なるときに、そこから構成されるbranched twist spinも異なるかが問題となる。群の比較などの考察を行った後、最終的には3次元軌道体の基本群の研究に結び付き、3次元軌道多様体の研究結果等を用いることで、branched twist spinを区別できることが分かった。 フロースパインの研究においては、最初の結果の論文が受理され、オンラインで公開されている。シャドウ補空間の基本群の研究についても、論文としてまとめ、すでに受理されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度から行っている無限遠の特異点の研究について、Serre fibrationに関する結果を得ることができた。また、4次元球面上の円作用の研究においても、2次元結び目の研究に関して、大きな進展が得られつつある。これらの研究はシャドウのような4次元空間内の多様体の表示を応用することを視野に入れており、シャドウの研究の応用の題材を作っているという意味で、今後の研究に繋がっている。研究はおおむね順調に進展している。フロースパインの研究およびシャドウ補空間の基本群の研究は、論文を執筆して一段落している状態で、他の研究の進捗に合わせて、さらに研究を進める予定である。 新型コロナウィルスの影響については、夏以降は国内では対面の研究集会が増え、研究打合せや研究集会への参加による情報収集を行うことができた。球面上の円作用の研究については、共同研究者と定期的に研究打ち合わせを行っており、順調に進んでいる。多項式写像の無限遠の特異点に関する研究では、秋まではNguyen Tat Thang氏とオンラインで定期的にセミナーを行うことで研究を進めた。秋以降はオンラインでの研究の継続に限界を感じたので、メールによる議論に切り替え、少しペースダウンした。研究全般には大きな影響はないが、研究のペースにはそれなりの影響がある。
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今後の研究の推進方策 |
多項式写像の無限遠の特異点の研究については、引き続き、Serre fibrationの研究を進める。今後の研究の進展のためには、重要性の高い具体例を作る必要がある。既存の具体例としては、Joita-Tibarの複素多項式写像による例が挙げられるが、複素多項式写像の場合には、無限遠の特異点の判定をファイバーのオイラー数で行うことができ、Serre fibrationを持ち込む必要がない。実多項式写像で、エキゾチックな例の発見が求められる。 球面上の円作用の研究については、3次元軌道体についての既存の結果を援用しながら、branched twist spinを構成する際の1次元結び目の回転数が0および2のときについて、1次元結び目の形を限定するなどして、より細かい研究を進めて行く予定である。 フロースパインおよび接触構造の研究は、考察をいくつか進めているが、膠着状態にある。シャドウ補空間の基本群の表示が得られているので、上記の研究を参考にしつつ、3次元と4次元の現象を比較して、フロースパインの研究に還元させる予定である。
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