研究課題/領域番号 |
19K03512
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
白石 潤一 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (20272536)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | Painleve VI 方程式 / 差分 Painleve 方程式 / アフィンLaumon空間 / 非定常差分方程式 / Ruijsenaars模型 / Macdonald多項式 / q 差分戸田方程式 / 非定常Ruijsenaars関数 / アフィン遮蔽作用素 / B型のq戸田作用素 / 隣接関係式 / affine screening / affine Laumon space / Ruijsenaars operator / affine Toda system / elliptic Calogero model |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の概要を箇条書きする: (1) affine screening operator、及び、それに付随する変形W代数の表現論の解析を通して、「非定常Ruijsenaars関数」の満たすべき「非定常楕円Ruijsenaars方程式」、を導出する。 (2) 非定常Ruijsenaars関数に関する双対性予想を証明する。 (3) affine Laumon spaceのde Rham複体の上に、量子トロイダル代数の表現を構成する。 (4) 非定常Ruijsenaars関数の定常極限について理解する。及び、その定常極限が楕円Ruijsenaars operatorの固有関数を与えることの証明を行う。
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研究実績の概要 |
S. Shakirov によって導入された非定常差分方程式と, 量子差分 Painleve VI 方程式との関係を見出した. (粟田, 長谷川, 菅野, 大川, Shakirov, 山田氏らとの共同研究[arXiv:2211.16772].)その差分方程式に付随する5次元の Seiberg-Witten 曲線は知られている4次元極限と整合的である. 即ち, 2次元共形場の理論(ないし4次元のゲージ理論)において, (ある)Belavin-Polyakov-Zamolodchikov方程式が量子(微分) Painleve VI 方程式と同定されること(名古屋, 山田)の自然な差分(5次元)類似として Shakirov の非定常差分方程式が位置付けられた. Shakirov の方程式は関数の組 (F_1,F_2) に関する2階の連立差分系として表現することができるが, それは長谷川のHamiltonianが拡大アフィン Weyl 群(D^(1)_5型)の並進作用素であることからの帰結である.
Shakirov は元々, q-Virasoro代数の差分共形ブロックで5点の演算子の挿入を持ち, そのうちひとつが退化場となるものを研究していた. そして, そのような関数が満たす方程式として Shakirov の方程式を発見したのであった. 他方, Alday-Tachikawa-Gaiotto(及びAlday-Tachikawa)の研究によれば, Virasoro代数の共形ブロックで5点の演算子の挿入を持ち, そのうちひとつが退化場となるものは別の(アフィンLaumon空間を用いる)組合わせ的記述を持つことが知られている. その5次元版を考察することで, アフィンLaumon空間の上のK群的分配関数(上述の(F_1,F_2) )がその2階の連立系の解を与えることが予想された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画立案の当初から昨年度までは, 「Macdonald-Ruijsenaarsの楕円的作用素の固有関数, アフィンLaumon空間の上のK群的分配関数, 及びそれらの関係」, に主な目標を絞っていた. まず, 分配関数に準拠しない立場を貫き, E. Langmann, M. Noumiとの共同研究で, 楕円Ruijsenaars差分作用素の固有関数の構成法を研究し(楕円的差分方程式系においても)固有関数が存在することを厳密に示した. (線形q差分方程式の一般論がまだないので, 今は個別に証明するしかない.) 次に, アフィンLaumon空間の上の接束のモジュライ空間を念頭に置いてその分配関数とそれが満たすべき方程式系の研究を行い, いくつかの結果と予想を得てきた(まだ多くの課題が難しいまま残されている). 他方, Laumon空間上トートロジカル束のモジュライ空間に付随する分配関数の性質も深く研究されてきた(大川, 吉田). そのような背景から, 大川との共同研究でアフィンLaumon空間上の接束ないしトートロジカル束のモジュライ空間に付随するK群的分配関数と壁越え公式について現在研究を進めている. そのような状況下, あるときS. Shakirov から驚きの連絡を受けた. そのとき彼は彼の 非定常差分方程式について個人的に知らせてくれた. その後の理解の進展はおよそ上述の通りである. トートロジカル束の場合の分配関数は, ある意味で接束の場合(Macdonald-Ruijsenaars的関数)より扱いが容易で, かつ, 一般のHeineの 2phi1関数(ガウスの超幾何関数2F1の差分類似)を含んでいる(Macdonald関数の場合はその変数が特殊化される)など, より広い視野(より一般の差分方程式系を見据えた)研究をするための材料となり得る.
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今後の研究の推進方策 |
当初の課題をもう一度標語的に述べる: 「アフィンLaumon空間の上モジュライ空間には量子群が作用しているので, そこから分配関数に関する方程式を導け」 それでは, この設定に従い素朴に考えれば, 非定常Ruijsenaars関数ないし, Shakirov の非定常方程式の解を, 量子Knizhnik-Zamolodchikov方程式(q-KZ)方程式の言葉で表せ, できればq-KZ方程式の(既知の)解を用いてあらわに書き表せ, ということが問題となる. 今後はこのような視点からもさらに研究を進めていくつもりである.
また, A型以外のMacdonald関数の明示的公式を見出す, という(とても難しい)課題についても, ゆっくりではあるが少しづつ進めて来た. いくつか新しい公式(特殊ケースでの予想など)が得られたので, それらをより一般の形でねべられるように整理していく.
Koroteev-Shakirovの導入した2重楕円系の固有関数と, 非定常Ruijsenaars関数との関連について, 多くのことが観察されすでに関連する研究者たちによって報告されている. ただし, 現在のところ多くが数式処理による検証が主で, 理論的な整備が非常に遅れているように思われる. 今後はKoroteev,Shakirovとの研究連絡を継続して周辺の基本的処問題を解決して行きたいと考える.
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