研究課題
基盤研究(C)
赤外線波長域には、珪酸塩・有機物・氷などの固体物質のスペクトルバンドが存在し、天体のスペクトル形状から物質の組成や温度やサイズが分かる。存在する物質の物理状態や形成条件からは、天体の現在と過去の物理状態が推定できる。ただし、分光データから複数の構成物質を正しく特定するには、また広がった淡いバンドを同定するには、観測データからスペクトル形状を精度良く決定する必要がある。これまで、空間分解能・波長分解能・感度を向上する開発に比べ、スペクトル精度を上げる開発は殆ど行われてこなかった。本研究では、衛星観測等の低背景環境における光分散型の分光器において、スペクトル形状の決定精度を改善する方法を開発する。
本研究では、低背景環境における光分散型の分光観測(宇宙望遠鏡搭載分光器等を想定)において、スペクトル形状の決定精度を改善する方法を研究してきた。光分散型分光器 (分光素子で分散した光をアレイ検出器で受けるタイプ) のデータを解析する際には、(a) 分散光イメージから暗電流や背景放射等のオフセットを差し引き、 (b) 装置の感度 (波長依存性) を補正するため、これらの精度が重要となる。昨年度からは、主に残った課題である(a)に取り組んでいた。検出器の暗電流の見積り精度が、スペクトル形状決定精度に支配的に効いている、赤外線天文衛星「あかり」が冷媒枯渇後に取得した近赤外線分光データを対象に、スペクトル形状精度改善の研究を進めていた。アレイ検出器における、各ピクセルの暗電流量の温度依存性を、温度の関数で精度良く記述し、それを解析に適用することで、光を分散させたイメージ上の強度ムラの誤認識、すなわちスペクトルの偽形状成分を軽減するアプローチを取り、一部の (対象天体が暗い) データは、改善できる事が分かった。しかし、スペクトル形状の偽成分と見られる物に、装置の温度依存性だけでなく対象天体の明るさ依存性も見られることが分かり、当初予定していたアプローチでは、不十分であることが分かった。今年度は、新たに判明した課題に取り組むため、他に改善すべき較正上の課題を一つずつ調査し、前述の暗電流に対する工夫と同じ要領で、各較正プロセスの温度依存性を考慮してゆく方針で取り組んでいたが、本研究期間の途中終了に伴い、課題をまとめるところで終わった。
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