研究課題
基盤研究(C)
本研究では、豪州南極海盆110°E付近の歴史的観測データおよび最近の船舶・深海用フロート観測データを用いて、同海域における南極底層水の長期的変化および2010年以降に生じたその変調について詳細な解析を行うことにより、2010年のメルツ氷河舌崩壊に起因した南極底層水の「レジームシフト」的変化の空間的な広がりを明らかにするとともに、アデリー海岸沖で観測された変化との差異から、豪州南極海盆における南極底層水の循環や変質過程を定量的に明らかにする。
本研究では、豪州南極海盆ウィルクスランド沖(110°E付近)の南極底層水の水温・塩分・溶存酸素の1930年代から2022年までの長期時系列データを作成し、解析した。得られた主な成果は以下の通り。(1)同海域に分布する南極底層水は、遅くとも1970年代から低塩化・温暖化、体積の減少の長期傾向を示している。(2)2010年中頃以降、南極底層水の変化はこれらの長期傾向から反転する傾向(「変調」)にあり、その原因としてメルツ氷河舌崩壊の影響が伺われる。(3)2010年代中頃から豪州南極海盆東部域で広く観測されている南極底層水の最深部の高塩化は、南極底層水自身の低塩化の停滞に起因する。
南大洋に起源を持つ南極底層水が高温・低塩化し、その体積が減少していることは広く観測されている。しかし、その知見のほとんどは、1990年以降、10年程度の間隔を空けて数回実施された船舶観測結果に基づくものであり、1990年以前の状況や、その変化の詳細についてはほとんど不明であった。本研究は歴史的観測データから長期の時系列データを作成することで、海域は限られるものの1930年代からの南極底層水の変化を示すことに成功した。また、豪州南極海盆東部域の広範囲で近年報告されている南極底層水の「高塩化」が生じるメカニズムを明らかにし、その真の原因は南極底層水の低塩化の停滞にあることを示した。
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Deep Sea Research Part I: Oceanographic Research Papers
巻: 195 ページ: 104040-104040
10.1016/j.dsr.2023.104040
Journal of Geophysical Research: Oceans
巻: 126 号: 12
10.1029/2021jc017935