研究課題
基盤研究(C)
本研究では、豪州南極海盆110°E付近の歴史的観測データおよび最近の船舶・深海用フロート観測データを用いて、同海域における南極底層水の長期的変化および2010年以降に生じたその変調について詳細な解析を行うことにより、2010年のメルツ氷河舌崩壊に起因した南極底層水の「レジームシフト」的変化の空間的な広がりを明らかにするとともに、アデリー海岸沖で観測された変化との差異から、豪州南極海盆における南極底層水の循環や変質過程を定量的に明らかにする。
本研究は、歴史的観測データおよび最近の船舶および深海用フロートによる観測データを用いて、豪州南極海盆ウィルクスランド沖(110°E付近)における南極底層水の時間変化、特にメルツ氷河舌の崩壊に起因した「レジームシフト」的変化の有無やその詳細を明らかにすることを目的とする。さらに、アデリー海岸沖で確認された変化との差異から、「レジームシフト」的変化の伝播の詳細を検討することにより、豪州南極海盆における南極底層水の循環や変質過程を定量的に明らかにする。2023年度は、前年度中に国際誌に投稿した論文を改訂・刊行した。また、その内容をまとめて、国内学会および国際学会において発表した。また、本研究により、以下のような次のような成果を得た。(1)対象海域で得られた観測船およびフロートによる観測データを用いて、1930年代から2022年までの南極底層水の水温・塩分・溶存酸素の長期の時系列データを作成した。(2)対象海域における南極底層水は低塩化・温暖化、体積の減少の長期傾向を示すが、これらは遅くとも1970年代に始まっている。(3)南極底層水の体積減少の長期傾向は加速する傾向にあるが、それは低塩化が加速していることが主な原因である。(4)南極底層水のこれら長期傾向は、2010年中頃以降、反転する傾向(「変調」)を示す。(5)この「変調」は、メルツ氷河舌の崩壊により引き起こされた海氷生成の急激な減少による、アデリー海岸沖での南極底層水の変化と酷似しており、この変化がウィルクスランド沖に到達したものである可能性が高い。(6)2010年代中頃から豪州南極海盆の東部域で広く確認されている南極底層水の最深部の高塩化現象は、ロス海盆から高塩な底層水が流入してきたのではなく、豪州南極海盆で形成される南極底層水自身の低塩化の停滞に起因している。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件)
Deep Sea Research Part I: Oceanographic Research Papers
巻: 195 ページ: 104040-104040
10.1016/j.dsr.2023.104040
Journal of Geophysical Research: Oceans
巻: 126 号: 12
10.1029/2021jc017935