研究課題/領域番号 |
19K04020
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
福間 浩司 同志社大学, 理工学部, 准教授 (80315291)
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研究分担者 |
伊藤 久敏 一般財団法人電力中央研究所, 原子力リスク研究センター, 上席研究員 (50371406)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 古地磁気強度 / テリエ法 / 地磁気永年変化 / フルネーズ火山 / 南大西洋磁気異常 / 南大西洋地磁気異常 / 地球磁場強度 / 球面調和モデル |
研究開始時の研究の概要 |
観測が始まった1840年から現在に至るまで地磁気強度は減少を続けている.この傾向が続けば宇宙線が地表付近まで到達する可能性もあるが,測定装置が開発される以前いつから地磁気の減衰が始まったのかはわかっていない.400年前から多くの商船が行き交ったインド洋の島々で火山岩を得て地磁気強度を求め,商船が残した羅針盤データと組み合わせることでグローバルな地磁気強度がどのように変遷してきたかを明らかにする.
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研究実績の概要 |
私たちは試料採取と実験室での測定の両面から,古地球磁場強度の精度を機器測定に匹敵するレベルまで引き上げる試みを行ってきた.加熱・冷却部と測定部が一体となった自動スピナー磁力計を使用すれば,24時間効率的に測定を進め,温度ステップも極めて柔軟に設定できる.試料採取と装置の両面の進歩により,既存のデータに比ベてはるかに高い精度の古地球磁場強度を得ることができる. 南インド洋のレユニオン島で採取した溶岩試料を用いてテリエ法による地球磁場強度データをまとめると同時に,データベース上の古地磁気強度データとの比較を進めた.溶岩の上部もしくは下部クリンカから採取した定方位のブロック試料について.試料毎に適切に定めた温度区間から古地磁気強度測定を求めた.厳格な判定基準を用いて解析をおこなった結果,12地点中10地点で平均古地磁気強度を求めることができた.また,クリンカの試料からの古地磁気方向もサイトで集中しており,冷却後の信頼できる地球磁場の方向を記録していることがわかった.その結果,過去の1000年間の南インド洋における地球磁場の方向と強度について連続的な変化を求めることができた. 一方,東アジアにおいては近年中国を中心にして考古地磁気強度の蓄積が急速に進んできており,GEOMAGIAというデータベースに収録されている.東アジアの考古地磁気強度の変化は考古地磁気モデルARCHから期待される値とよく一致することがわかった.データの蓄積がもっとも進んでいるヨーロッパと東アジアの間で,球面調和モデルを通じて過去3000年間の地球磁場強度の変動が復元されつつある.さらに,南インド洋のレユニオン島の過去1000年間の古地磁気データもARCHと調和的であり,ヨーロッパ - 南インド洋 - 東アジアの地球磁場変動が1つのモデルで説明できるようになってきた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に南インド洋のレユニオン島で過去1000年間に噴出した火山岩を採取した.噴出年代が明らかになっている12地点において,溶岩の上部もしくは下部クリンカから定方位のブロック試料を採取した.熱磁気分析により,上部クリンカはチタンに富むチタン磁鉄鉱を含み,下部クリンカはほとんど純粋な磁鉄鉱を含むことが明らかになった.上部および下部クリンカはいずれも単磁区粒子に近い磁気ヒステリシス特性を示し,地球磁場強度を求めるのに適した試料であることがわかった. 2年目は,火山岩から信頼できる地球磁場強度を得るのに適した試料を選びだした.下部クリンカに加えて,上部クリンカでもチタン含有量の高いチタン磁鉄鉱が極めて安定な残留磁化を担っており,古地球磁場強度実験に有用な試料であることがわかった.熱消磁炉付自動スピナー磁力計を用いて,下部および上部クリンカの試料を24時間自動で測定を進めた. 3年目は,レユニオン島で採取した溶岩試料を用いてテリエ法による地球磁場強度を求める測定をさらに進めた.温度ステップを試料毎に適切に定めて古地磁気強度測定を行い,2/3の上部もしくは下部クリンカサンプルから古地磁気強度を得ることができた.クリンカ試料からの古地磁気方向も信頼できることがわかり,過去の1000年間の南インド洋における地球磁場の方向と強度を求めることができた. 今年度は,東アジアの考古地磁気データを解析し,球面調和モデルCALS3kとはズレが生じるが,ARCHとよく一致することがわかった.すなわち,信頼性の低い堆積物からの古地磁気強度データを除けば,ヨーロッパと東アジアの過去3000年間の地球磁場は一貫したモデルで説明できる.過去1000年間についてはレユニオン島のデータもARCHと一致し,ヨーロッパ - 南インド洋 - 東アジアの地球磁場変動が1つのモデルで説明できるようになってきた.
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今後の研究の推進方策 |
レユニオン島での過去400年間の地球磁場強度の変化が得られれば,球面調和モデルにより地磁気双極子強度の変化を得ることができる.レユニオン島周辺は400年前から密に羅針盤データが記録されている海域であり,非常に精度の高い地球磁場の方向が得られているので,信頼できる地磁気双極子強度の変化を得ることができる.私が最近過去400年間の古地球磁場強度を得た伊豆大島と三宅島からも,羅針盤データが得られた航跡から離れているためやや精度は落ちるものの,地磁気双極子強度の変化が得られている.レユニオン島と日本から独立に得られた地磁気双極子強度は原理的には一致するはずであり,その統計的な扱いも含めて過去400年間の地磁気双極子強度の変化を得る. レユニオン島では1000年前まで遡る古地磁気強度が得られている.レユニオン島は地球上で最大の地磁気異常である南大西洋異常に隣接しており,古地磁気強度データが不足している南半球で1点での均質な試料から得られる貴重なデータを与える.南大西洋異常は現在進行中である地磁気双極子モーメントの減少と直接結びついていると考えられ,南大西洋異常がいつどのように発達してきたかは将来の地磁気変化の予測を大きく左右することになる. 今後はレユニオン島の過去1000年間のデータを論文で公表するとともに,データベースを活用して東アジアの考古地磁気データの解析を進め,これまでのようにヨーロッパに偏ったデータではなく,グローバルに分布したデータから過去数千年間の地球磁場の変動を明らかにする予定である.
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