研究課題/領域番号 |
19K05023
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
坪内 信輝 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (10357535)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2019年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ダイヤモンド / ホモエピタキシャル膜 / 欠陥 / 格子歪 / 応力 / 半導体デバイス / ホモエピ成長 / 結晶性 / 多層構造 / 結晶欠陥 / 歪み |
研究開始時の研究の概要 |
高熱伝導性等の極限的物性を有するダイヤモンドは将来世代の高出力半導体デバイスや深紫外発光デバイス用の材料としての応用が期待できる。一方、現状の試作ダイヤモンドデバイスでは、その潜在能力を十分に生かし切れていない状況である。その原因につき、ダイヤモンド特有の小さな格子定数とそれに関連する格子緩和による結晶性低下が重要因子のひとつではとの作業仮説の元、本研究ではダイヤモンド積層構造等を作成し、透過電子顕微鏡を主に用いて、含まれる欠陥類の形態と局所歪みをナノスケールで観察・評価する技術を実現するとともにその結晶性低下の原因を考察し、ダイヤモンドデバイス高品質化の手掛かりを得ることを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は2層の積層構造として、001面を上面とする板状の高温高圧合成単結晶ダイヤモンド基板上に成長させたBドープホモエピタキシャル膜に含まれる成長欠陥や拡張欠陥の形態観察と、それら異常部の局所応力・歪の評価を主として行った。成長欠陥としてはドーム状成長丘を対象とした。断面透過電子顕微鏡観察によりこのドーム状成長丘内部は膜や基板と結晶方位が一致する単一ドメインから構成される一方、境界部にはマクロな双晶領域が存在し、そこを起点として高密度転位がドメイン内部に伸展していることが観察された。この成長丘部分をラマンマップで観察した結果、ピーク位置変位分布として、内部は単一ドメインであるにもかかわらず、異なる応力値を有する局所的領域が幾つかのエリアに分かれ複数あることが明らかになった。後者に相当するものとして、偏光顕微鏡像に現れる花弁様パタンの形態観察と局所歪の評価を行った。幾つかのパタンの中央部には粒状の析出物様構造物が光学顕微鏡で観察された。その部分のラマン散乱を行うと、ダイヤモンドのフォノンピークのみが観察された。種々の状況を勘案し、この粒は多結晶ダイヤモンドの可能性が高いと判断された。また、ひとつのパタンの中心部分付近の断面透過電子顕微鏡観察を行ったところ、多数の貫通転位が存在することが明らかとなり、そのおよそ27%が110等価方向のバーガースベクトルを有する刃状転位、53%が101等価あるいは010等価のバーガースベクトルを有する45度転位から構成されていることが分かった。さらに、パタン部の平面および断面ラマンマップ測定を行った。後者については、析出物付近と思われる部分を起点とした、周囲よりも最大0.2cm-1程度にピーク位置が高シフトした漏斗状の領域が存在することが明らかとなった。これは、上記の転位束が全体として圧縮応力傾向の、漏斗状の歪領域を誘起している事を示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本来上記成果の中に回折図形評価が含まれる予定であったが、コロナ禍での外部施設使用の制限等もあり、技術的に十分な検討を行うことが難しい面があり、分解能としてはやや悪いラマン散乱による評価を行った。前者の技術的課題については徐々に解決しつつあり、最終年度内に当該評価を含めた成果を得られるよう努力していく。総じてやや遅れているが、これら上記の結果を元にして計画の遅れを取り戻し、最終年度を迎えることを目指していく所存である。
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今後の研究の推進方策 |
これ迄、感染防止対応等の影響で外部施設利用が難し期間があり、掛かる部分について研究の遅れが生じた。本年度は、規制緩和への対応のみならず、状況悪化への対応も考慮しながら、遅れを取り戻すべく回折図形を用いた格子歪評価を実施し、当該目標を達成すべく計画を遂行していく予定である。一方、分解能では落ちるがラマン散乱手法も、ある一定の評価手法となり得る面もあることが分かってきたので、代用評価手法として研究遂行のため活用していきたい。これら成果として、これ迄得られた知見を含めた査読付論文出版に漕ぎ着けることを目指す。
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