研究課題
基盤研究(C)
「角度分解偏光ラマン分光法」を用いることで,これまで1つのデータしか得られなかったところで偏光角度の違うたくさんのデータを得ることが可能となった.そして,物質の性質をより詳しく理解できるようになった.一方で,データが増えて解析が大変になっている.本研究では,角度分解偏光ラマン分光の解析法を発展させる.そして,「誘電体の電気を蓄える性質がどうやって決まるのか」理解したい.これが理解できれば,より高性能な誘電材料を開発できると信じている.
大量のスペクトルを取得する角度分解偏光ラマンマッピングの手法と多変量解析を組み合わせることで,効率的に「複雑な階層構造を有するリラクサー強誘電体に潜むダイナミクス」を明らかにする手法を本研究で構築した。その結果,リラクサー強誘電体の機能に重要な階層を同定し,そのダイナミクスで物性を理解できた。以下に年度ごとの取り組みを示す。○[2019年度]多変量曲線分解という行列を分解する手法を角度分解偏光ラマン分光法に初めて導入した。大量のスペクトルを効率的に処理し,情報を落とすことなく格子振動の情報が抽出できることを示した(Jpn. J. Appl. Phys. 59, SKKA03 (2020).)。○[2020年度]は,様々なリラクサー強誘電体において,角度分解偏光ラマン分光実験を実施した。多変量曲線分解を用いて効率的に解析を行い,異なる試料間の情報を比較した結果,不均一構造(化学的秩序領域)の情報を抽出することができた(Jpn. J. Appl. Phys.60 SFFA04 (2021).)。○[2021年度]は,この解析の効率化を基に,様々な強誘電体へと研究対象を広げるとともに,第一原理計算を基にした格子振動の可視化を行った(セラミックス 57, 609(2022).)。○[2022年度]は,位置を変えて角度分解偏光ラマン分光を行う「角度分解偏光ラマン顕微鏡」の開発を行った。多変量解析でスペクトルを効率的に処理し,自発分極の配置や揺らぎのはやさを決めることに成功した(Commun. Phys. 6,107 (2023). )。○[2023年度]は,以上の成果を論文としてまとめきって,成果を様々な会議で報告した。そして,日本誘電体学会の会議において最優秀講演賞(4日間の会議で行われた42歳以下の講演で,最も優れた1件だけが選出)に選ばれた。
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