研究課題
基盤研究(C)
近年,新規強誘電体デバイスとしてメモリが提案され,その動作原理がバンド傾斜構造を用いて解釈されている。バンド傾斜する方向は電気分極向きに対応するため,電子の能動的な移動が制御可能なシステムとなる。本研究では,分極向きが揃ったエピタキシャルな強誘電体酸化物薄膜をパルスレーザー堆積法により合成し,その試料に対し分極方向への深さスキャン可能な角度分解硬X線光電子分光実験によるバンド傾斜の直接観測を試みる。バンド傾斜観測に成功すれば,強誘電体の分極形成機構がバンド傾斜を特徴とする電子構造から解明でき,強誘電体中の特異な電子挙動を使ったメモリの精密設計が可能となる。
放射光硬X線を用いた角度分解光電子分光実験を行うことにより,強誘電体の傾斜したバンド構造を電気分極方向をスイッチさせることで傾斜方向が変わる様子を観測することに成功した(Sci. Rep. 10, 10702 (2020),SPring-8プレスリリース2020/7/3付)。また各イオンの原子軌道のエネルギーシフト量を比較することで,強誘電性の起源となる電気分極の成り立ちについて,フォノンと電子構造の双方から議論を可能とし,新たな誘電体学理への道を切り開いた。なお,本研究は仏のグループとの共同研究により加速進展したため,R3年度国際共同研究強化(A)に申請し採択された。
スマートフォンなどに用いられるコンデンサーの基幹材料である強誘電体は,電荷を蓄えられるだけでなく,ダイオードのような電気の流れ方をすることが最近わかってきた。その動作原理は,「傾斜したバンド構造」によるものと考えられてきたが,実証した例はなかった。我々は放射光を用いた実験により,初めて傾斜したバンド構造の直接観測に成功した。今回の成果により,強誘電体を用いた新しいデバイス開発の進展が期待される。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
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