研究課題/領域番号 |
19K05630
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
清水 洋 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特任教授 (40357223)
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研究分担者 |
河合 壯 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40221197)
内田 欣吾 龍谷大学, 理工学部, 教授 (70213436)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2019年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | カラムナー相 / スメクチック相 / 双液晶性 / 光誘起液晶相転移 / アゾベンゼン / トリフェニレン / π-π相互作用 / 異方的分子間力 / 光誘起双液晶性 / πーπ相互作用 / カラミチック液晶 / ディスコチック液晶 |
研究開始時の研究の概要 |
これまで熱相転移型液晶は分子の異方的平均形状が棒状及び円盤状の2つのカテゴリーで整理されてきたが、研究代表者及び分担者は、円盤状のトリフェニレンをコアにその周辺に6個の棒状とみなしうるテトラデシロキシアゾベンゼンをエステル基とプロピレン鎖で結合させた化合物が温度により棒状にも円盤状にも振る舞う液晶相転移を示す、単一分子系では世界初の双液晶性化合物を見出している。本研究では、当該化合物の双液晶性相転移の詳細を明らかにし、従来の液晶学における分子形状の異方性と形成される液晶配向構造の従来の構図に新たな位置付けを加え、新機能を含めた液晶学の新たな展開に資する。
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研究実績の概要 |
我々が見出した世界初のカラミチックーディスコチック双液晶性化合物(カラミチック液晶性(棒状分子の示す液晶性)とディスコチック液晶性(円盤状分子の示す液晶性)を単一化合物種で示す)であるトリフェニレンのヘキサテトラデシロキシアゾベンゼンエステル誘導体(1-C14-3)について、令和3年度はSmA相とColr相間の相転移メカニズムの概要を明らかにでき、そのアルキル同族体についてもスメクチックーカラムナー相転移のメカニズムの詳細解明を開始した。 令和4年度は、スメクチック-カラムナー相転移におけるスメクチック層状構造形成を担うアルコキシアゾベンゼンユニットとカラム構造形成を担うトリフェニレンユニットの役割を解明するために、SmA相とカラムナー相形成のアルキル鎖長依存性を調べた。アルキル鎖長が短くなると、スメクチック相における層状構造中で棒状分子として振る舞う分子中心となるトリフェニレン部π電子系同士のπーπ相互作用が増強し、層状構造中でカラム構造様の秩序が増強されることを見出した。これはいわゆるラメロカラムナー相に分類され得るが、これまで、ラメロカラムナー相を形成する液晶性化合物は大きく分子のコンフォーメーションを変える系ではないと言う点で、ラメロカラムナー液晶研究の新たな展開を可能にする液晶系であることも判った。これらのことは、1-C14-3のSmA-Colr相転移では、層状構造形成を担うアルコキシアゾベンゼンユニットと分子積層構造であるカラム構造形成を担うトリフェニレンユニットそれぞれの分子間相互作用のバランスがこの双液晶性発現にとってキーとなる重要因子であることを示唆しており、さらに棒状ー円盤状のコンフォメーション変化に関係すると考えられるアルコキシアゾベンゼンユニットとトリフェニレンユニットを繋ぐ結合基の双液晶性への効果についてそのエーテル類縁体が発現する液晶相の詳細検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
一昨年度に始まるコロナ禍にあって、SPring-8等での共同実験に関する研究分担者との十分な打合せが難しい時期が続いた。そのために、本研究に関係する学生諸君の実験、討論における様相に改善が成し得ず、平素の研究実施ペースは鈍化した状況のまま推移せざるを得なかった。その結果として当初計画の重要検討項目である双液晶性のメカニズム解明はその概要を明らかにできたが、完結できていない。その解明には未だいくつかの課題を残しており、この現状から、当初計画では本課題の実施最終年度を令和3年度としていたところ一年の延長を申請し、なおかつ再延長申請を行い承認されたことを受けて令和5年度も最終年度への取りまとめを行うべく引き続き本課題の研究を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度は、(1)エステル誘導体について得てきた知見を元にエーテル類縁体の液晶性を検討しその液晶性の詳細を解明する。これによりカラミチックーディスコチック双液晶性発現のための分子設計の考え方を提示する。これらの検討は、合成化合物の精製法の確立、熱分析や温度可変偏光顕微鏡を用いた熱相転移に関する知見の獲得に加えて、液晶相における配向試料を用いた高輝度X線散乱測定を用いて行うとともに、想定される各コンフォーマーの持つエネルギーの観点から分子力場(MM)法や密度汎函数(DFT)法等を用いた理論シミュレーションも実施する。また、学内共用機器として導入の高速AFMを用いたナノスケールでの相転移の実際を動画データとして得ることを試みる。高速AFMについては、液晶相への適用はまだ報告例が少ない。(2)エステル誘導体の等温光誘起双液晶性相転移の実態解明を光強度可変条件でGI-SAXS法を用いて解明し、熱相転移とメカニズム上の相違を明らかにする。以上を通して、本研究課題のまとめを行い、今後を展望する。
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