研究課題/領域番号 |
19K05818
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分38030:応用生物化学関連
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研究機関 | 創価大学 |
研究代表者 |
丸田 晋策 創価大学, 理工学部, 教授 (40231732)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2019年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 機能性抗癌剤 / キネシン / 光制御 / フォトクロミック分子 / 分子モーター / 細胞有糸分裂 / アゾベンゼン / スピロピラン / 有糸分裂 / フォトクロミック / 細胞機能 |
研究開始時の研究の概要 |
キネシン Eg5 は、細胞周期の M 期の進行において細胞有糸分裂に関わる重要な役割を担っている生体分子機械である。Monastrolなどの特異的阻害剤は、抗ガン剤として注目されている。申請者らは、これまでにアゾベンゼンなどのフォトクロミック分子の誘導体が、これらの阻害剤を模倣して光可逆的にEg5の機能を阻害することを明らかにした。本研究では、フォトクロミック分子であるアゾベンゼンとスピロピランの誘導体を融合させた、これまでに無い高効率、且つ多段階の光スイッチ機構をもつフォトクロミックEg5阻害剤の開発を行い、細胞レベルでEg5の活性を光可逆的に制御することを試みる。
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研究実績の概要 |
これまでの研究において、二種類のフォトクロミック分子、スピロピランとアゾベンゼン誘導体をカップリングさせることにより紡錘体キネシンEg5の光応答性の阻害剤を調製している。そして複数の光異性化状態を形成する多段階光 スイッチ機構を持つEg5阻害剤SPSABは、VIS、UV、およびin the darkで、SP-Trans、MC-Cis、MC- Transの異なる3つの異性化状態を示した。 そしてSPSABのin vitro実験において、Eg5-ATPase活性は、強く、弱く、中程度に制御されることが示された。従来型キネシン共存下においてin vitro motility assayを行うこと により微小管と解離した状態でキネシン Eg5を阻害することが示されている。そこで、当該年度は、SPSAB がキネシンATP加水分解サイクルと運動サイクルのどのステップを阻害しているか、その阻害機構を明らかにする実験を行った。 1. キネシンEg5のATP結合とADP解離のステップへの光スイッチング阻害剤の影響を調べるために、蛍光標識したATPアナログMant-ATPを用いた解析方法を確立することを行った。ADPの解離を阻害するEg5のモデル阻害剤を用いて解析方法が機能することを確認することができた。また、ATPからADPへ加水分解するステップの解析法の構築も試みた。 2. キネシンEg5が微小管上を運動するサイクルのどのステップを光スイッチング阻害剤が阻害しているかを示すために、従来型キネシンと共存させたinvitro motility assay方の構築を行った。そして、2種類のモデルEg5阻害剤を用いてEg5が微小管と結合した状態あるいは微小管から解離した状態であるか示す方法を確立することができた。 3. 新たな光スイッチングEg5阻害剤の合成を試みた。そしてスルホン化アゾベンゼンに二つのスピロピランを導入した複数の光異性化状態を形成する多段階光 スイッチ機構を持つ新規の化合物を合成することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
1. キネシンEg5のATP結合とADP解離のステップへの阻害剤の影響を調べるために、蛍光標識したMant-ATPを用いた解析方法を確立することができた。Mant-ATPが、キネシンEg5の活性部位に結合すると蛍光強度が増加することから、ATPの結合するすステップをモニターできることが示された。またMant-ADPがキネシンEg5の活性部位から解離すると蛍光強度が減少することから、解離のステップを示すことがわかった。このようにEg5阻害剤のATP結合とADP解離のステップのモニター方法の構築ができた。また、ATPからADPへ加水分解するステップを調べるために高感度リン酸定量法を用いて経時的リン酸定量を行い、0時間に外挿して得られる突発的なリン酸放出から活性部位におけるATPからADPへの加水分解のステップをモニターできる方法を構築できた。
2. キネシンEg5が微小管上を運動するサイクルのどのステップを光スイッチング阻害剤が阻害しているかを示すために、従来型キネシンと共存させたMixed motor assayと呼ばれる方法を用いてモデル阻害剤によるEg5と微小管の結合状態あるいはEg5が微小管から解離した状態への影響を見る方法の構築ができた。結合した状態でEg5の運動活性を阻害するBRD1と解離した状態で阻害するSTLCの典型的なパターンが観察され、運動活性のどのステップを阻害しているか解析する方法が確立できた。
3. これまでに合成している多段階の光異性化状態を示す光スイッチングEg5阻害剤はアゾベンゼンに一つのスピロピランをカップリングさせたもので、光異性化間の阻害効果の差が大きくなかった。そこで、今回は光異性化間の阻害効果を大きくすることを目的として水溶性を上げたスルホアゾベンゼンの両脇に二つのスピロピランを導入した複数の光異性化状態を形成する新規の化合物を合成した。
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今後の研究の推進方策 |
1. Eg5阻害剤のATP結合とADP解離のステップのモニター方法の構築ができたので、これまでに合成している多段階光スイッチ機構を持つEg5阻害剤が、これらのステップに影響を与えているか解析を行う。また、構築したEg5の活性部位におけるATPからADPへの加水分解のステップをモニターできる方法を用いて多段階光スイッチ機構を持つEg5阻害剤の影響を調べる。
2. 構築したMixed Motor Assay法を持いて、多段階光スイッチ機構を持つEg5阻害剤が、運動活性のどのステップが阻害しているか解析する。
3. 今回合成した大きな光異性化間の阻害効果が期待できるスピロピラン-スルホアゾベンゼン-スピロピランの新規化合物を用いてEg5のATPase活性の他段階光制御実験を行う。そして、阻害が観察された場合、1.と2.の方法を用いてATPaseサイクルと運動サイクルのどのステップが阻害されているか明らかにする。
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