研究課題
基盤研究(C)
本研究ではCMVをモデルウイルスとして,以下の二点について検討する。①CMV CPを誘導現させる実験系により,葉緑体遺伝子の発現量低下と葉緑体形態異常が「いつ」起こるのかを解析し,退緑発症,光合成活性の低下と葉緑体遺伝子発現量低下・葉緑体形態異常との因果関係を明白にする。②葉緑体遺伝子発現量低下に関与する宿主植物のシグナル経路を探索するために,CMV CPを誘導発現して退緑を示す形質転換シロイヌナズナを作出し,さらに変異原処理してCPが発現しても退緑しないCPナズナを得る。そして,退緑を示さなくなった原因遺伝子を同定する。
本研究では植物ウイルス感染による代表的な症状である退緑の発症機構を解明するために、キュウリモザイクウイルス(CMV)の外被タンパク質(CP)の役割を検討した。CMV CPは葉緑体フェレドキシンI(FdI)と相互作用することが知られていた。そこで、葉緑体局在シグナルを付加したCPやFdIと相互作用しないCPを発現する変異株などを用いた接種実験により、葉緑体でCPとFdIが相互作用することにより激しい退緑が発症する可能性が示唆された。一方で、CP単独発現では激しい退緑症状が再現されず、CMV感染による激しい退緑症状にはCP以外のウイルス因子も必要であることが示唆された。
ウイルスが感染した農作物では様々な病気が引き起こされて減収に至る。ウイルス感染による発病機構の解明は防除研究に重要な基礎的知見となる。本研究では、葉緑体でCPとFdIが相互作用することによりCMV感染による激しい退緑が発症する可能性が示唆された。この可能性をさらに検討し、CPと相互作用しないFdIを設計することにより、CMV感染しても激しい退緑を引き起こさない耐病性作物を作出できるかも知れない。CMV CPの129番目のアミノ酸変異で症状が大きく変化することは1990年代初頭には知られていた。本研究成果は、なぜ一アミノ酸変異で激しい退緑になるのかという疑問の解明に向けた大きな一歩である。
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