研究課題
基盤研究(C)
真菌類の中でも菌株保存が特に困難である菌根性担子菌類の菌株の凍結保存法および凍結保存後の菌株の品質評価法を開発し、本菌群の長期保存法を確立することを目指す。研究方法は、以下のとおりである。① 凍結保存前の前培養法の改良:これまでに効果が認められている多孔性鉱物を培養基材とした手法を改良する。② 凍結保存後の菌株の品質評価法の確立:宿主植物との共培養によって菌根形成能の保存性を評価する手法を確立する。③ 汎用性の高い保存法の確立:多種多様な菌株を用い,①で改良した保存法の有効性を評価し、培地、凍結法、凍結保護剤、復元培養法などに改良を加え、菌株を長期間安定して保存できるプロトコルを開発する。
難保存性の菌根性担子菌培養株を対象にして、凍結・復元後に高い生残率、菌糸成長速度および菌根形成能を維持できる凍結保存法の開発・改良に取り組んだ。菌根形成能を評価するための菌根合成実験では、復元後の菌株をアカマツ実生苗に接種して形成させた合成菌根では野外菌根の形態的特徴が再現されていること、凍結保存による傷害の程度は菌根化率で評価できることが分かった。様々な前培養法を比較した結果、バーミキュライトを培養基剤に用いるシャーレ法は従来のチューブ法よりも生残率と菌糸成長速度維持の点で優れた前培養法であること、一方、菌根化率の維持の点ではシャーレ法よりも寒天ディスク法が優れていることが分かった。
本研究の成果は、生態学的にも経済的にも重要な菌群である菌根性担子菌類の培養株を長期間安定的に保存する方法の開発・改良に貢献するものである。これまで本菌群は分離・培養が難しいだけでなく、その培養株の保存が困難なために、世界の菌株保存機関でもわずかな菌株が保存されているのみで、入手が困難なため活用されることが少なかったが、菌株の性状を維持できる凍結保存法を開発することによって、様々な研究分野において本菌群の多種多様な培養株を生物資源として活用することが可能になる。
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