研究課題
基盤研究(C)
肝臓毒マイクロシスチンLR (MC-LR)は、高濃度曝露により肝細胞毒性を発揮し肝機能不全を引き起こす。一方、低濃度の慢性曝露により肝細胞増殖活性を発揮し、何かしらの要因でDNAにダメージを受けた肝細胞に対して肝がんの発がんプロモーターとして機能する。研究代表者らは、MC-LR曝露後の一部の細胞が剥離・浮遊するにもかかわらず、死滅から逃れ数日後には再生する新奇な現象を発見した。そこで、このアノイキス抵抗性細胞への形質転換誘導能の発現に関する分子機序の詳細を明らかにする。また、この新奇な形質転換に対して抑制的に働く化合物の探索にも検討を加える。
Microcystin-LR曝露後の剥離・浮遊細胞を回収し,E-カドヘリンの発現変動を解析した結果,遺伝子,タンパク質ともに発現量が顕著に減少した。剥離・浮遊後に再接着した細胞はMicrocystin-LR以外に,NodularinおよびOkadaic acidに対しても耐性を示し,3ヶ月間継代培養すると細胞内のMicrocystin-LRは検出されず,Microcystin-LRに対する感受性が親細胞のHEK293-OATP1B3と同等に戻った。また,生薬イワジシャの成分ActeosideはOATP1B3を介したMicrocystin-LRの細胞内への取り込みを阻害し,細胞毒性を減弱した。
近い将来に水道法の改正等によりMicrocystin-LRが「要検討項目」から少なくとも「水質管理目標設定項目」に引き上げられることが望まれ、結果的に我が国の健康水準がより上昇することが期待される。さらにMicrocystin-LR、Nodularin、およびOkadaic acid中毒、ならびに疫学的因果関係が不明の肝臓障害の発生予防や対症療法の確立に貢献し、水圏生命科学領域における「食と健康」・「水と健康」研究を通じて世界中の人類の公衆衛生の向上に寄与することが期待される。
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