研究実績の概要 |
絶滅危惧種指定されている宮崎県のアキアカネと比較対象として福島県のアキアカネを対象に, アキアカネ保全を目的とした気候変動下の水稲栽培管理の検討を行った. その結果, 宮崎市において卵の発育ゼロ点と有効積算温度は早期栽培条件では発育ゼロ点5.8℃, 有効積算温度103.4日度となった. また, 幼虫では発育ゼロ点10.6℃, 有効積算温度678.8日度となった. 福島県のアキアカネ卵の発育ゼロ点と有効積算温度は, 早期栽培条件で9.7℃, 52.9日度, 普通期栽培条件では13.8℃, 33.6日度となった. 幼虫は, 発育ゼロ点9.8℃, 有効積算温度712.8日度となった. 算出された卵と幼虫の発育ゼロ点と有効積算温度と水田水温を用いて, アキアカネの孵化予測日と終齢到達予測日の推定を行った. 水田水温の推定には, 宮崎市の平均気温(2013~2022)を用いて推定した. その後, 宮崎県のJAの聞き取り調査から宮崎市の代かきと中干し日を明らかにし, 推定した孵化日と終齢到達日と比較した. その結果, 宮崎市の早期栽培では孵化後の代かき, 終齢到達前に中干しが行われていると推測された. 特に, 現行の早期栽培(コシヒカリ)の中干し時期(5月15日頃)は幼虫の終齢到達予測日(6月6日)よりも22日程度も早く行われていると推定された. したがって, 宮崎市における早場米の栽培方法は, アキアカネの羽化発生数の減少を引き起こしている可能性が高いことが明らかとなった. 九州地方のアキアカネの再生を図るためには, 中干しの延期が必要である.
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