研究課題
基盤研究(C)
本研究では、河川中の懸濁有機物(粒子状有機物:POM)と流域の表層土壌有機物(SOM)に対し、①その多様な組成と放射性および安定同位体プロファイルをデータベース化し、②定常的な土壌侵食や表層崩壊の起こった位置と規模を検知するシステムの構築を行う。本研究を全国的に展開することができれば、近年増加傾向にある、豪雨や地震による土砂災害の被害軽減に直結すると考えられる。
流域内における母材の元素組成は、河川水中の懸濁および溶存物質組成に影響を与える。しかし、流域全体の土壌と河川の構成成分の変化を推定可能なモデルは少ない。そこで千代川流域において河川水を採取し、懸濁および溶存物質組成を調べた。また、流域内の地質、地形、土壌、降水量分布をGISによって統合し、採水地点における懸濁および溶存物質組成を説明する因子を抽出した。その結果、母材因子としては、花崗岩が溶存イオン組成、花崗閃緑岩・デイサイトが懸濁態組成の一部にそれぞれ影響を及ぼしていた。気象因子として、中間流出量は懸濁態物質含量と有意な正の相関を示したが、地域別にみると必ずしも流出量は影響していなかった。
地球規模での気候変動の顕在化により、増加する傾向のある表層崩壊や土壌侵食、洪水等の豪雨被害への関心は全世界的に高まっており、表層崩壊や土壌侵食の発生場所と規模を検知するシステムの構築につながる本研究は、大きなインパクトを持つと考えられる。特に、高度な防災システムを持たない途上国において、システムの簡便さからより大きな役割を持つと考えられる。また学術的にも、これまであまり正確な推定値が求められていない、日本近海に対する陸域からの河川経由の物質輸送量について新たな知見を提供できると考えられる。
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Journal of Nuclear Science and Technology
巻: 58 号: 4 ページ: 507-514
10.1080/00223131.2021.1894255