研究課題
基盤研究(C)
次世代の生命をつなぐ配偶子を形成する生殖腺は生殖細胞と体細胞から成り、その相互 作用が配偶子形成に必須であることから、生殖腺の体細胞に関する理解は配偶子形成機構の解明において必須となる。そこで本研究では、胎子卵巣での一細胞トランスクリプトーム解析から得られたデータをもとに、体細胞系譜サブタイプのクラスタ解析を行い、系譜の サブタイプ間での遺伝子発現解析や遺伝学的解析を行う。これらにより、配偶子形成や生殖腺の運命決定に大きな役割を担う胎子卵巣体細胞のheterogeneityを生み出す細胞系譜サブタイプの分子基盤を明らかにし、卵巣分化過程の解明につなげる。
本研究では、形態的特徴の乏しいマウスXX胎子卵巣体細胞の多様性(heterogeneity)を明らかにするため、胎齢13.5日胎子卵巣の一細胞トランスクリプトーム解析とin situ hybridizationによる発現パターン解析を行った。その結果、胎子卵巣の体細胞は遺伝子発現プロファイルから2つのクラスタに分けられること、卵胞上皮細胞に発現するFoxl2陽性細胞は両方のクラスタにまたがって存在することが明らかとなった。また、Foxl2陽性細胞においてクラスタ間で発現変動する遺伝子群のうち、卵巣髄質と中腎境界部に限局した発現パターンを示す遺伝子2つを同定した。
胎子卵巣の分化過程は、その形態的変化が乏しいことから、特に体細胞分化のメカニズムについては未だ不明な点が多く存在する。一方、我々はこれまでに、胎子卵巣髄質領域に限局して、雄型の支持細胞になり得る性的未分化性を有するFOXL2陽性の特殊な支持細胞系列が存在することを示唆するなど、胎子卵巣体細胞の多様性(heterogeneity)が考えられてきた。今回の研究はそのheterogeneityを制御しうる候補遺伝子の同定を行った。これらの遺伝子のさらなる解析により、哺乳類胎子卵巣の分化機構の解明やフリーマーチンを含むXXの性分化異常症の発症機序解明につながることが期待される。
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