研究課題
基盤研究(C)
ボロボロノキは、二型花柱性という特異な繁殖様式を示し、その送粉者として奄美大島では夜行性の小型ガ類が、熊本ではガ類に加えてマルハナバチ類が重要であった。また送粉者の違いに対応するように集団間で花香成分が大きく異なり、熊本では奄美大島で検出されない成分が検出された。これらの結果は、分布域拡大において異なる送粉者に対応して、花香を変化させてきた可能性を示唆する。そこで本研究では、本種分布域の主要な集団について花粉媒介者、花香成分の実態解明を進め、集団間の遺伝的分化に根ざした系統地理学的解析から、送粉様式の多様化がどこで、どのように起こってきたのか、そのプロセスを明らかにすることを目的とする。
東アジアの日本、台湾、中国等に分布する二型花柱性ボロボロノキにおける送粉様式の多様化とその進化過程を解明するために、九州から南西諸島のいくつかの集団を対象に送粉様式、花香成分、遺伝的分化についての調査を進め、以下のような成果を得た。1)送粉は、南西諸島の集団では主に夜行性の小型ガ類によって、九州の集団では夜行性の小型ガ類とマルハナバチ類等によって行われる。2)花香の主成分はフェニールプロパノイドで、九州と南西諸島の集団間には大きな違いがない。3)九州と南西諸島の集団間には、明瞭な遺伝的分化が確認できる。4)送粉者の違いは花香成分とは一致しないが、遺伝的分化の境界とは一致する。
本研究は、二型花柱性という特異な繁殖システムをもつボロボロノキの送粉様式、花香成分、遺伝的分化について解析し、その送粉様式や遺伝的特性が地理的分布に対応して変化していることを示した成果である。このような例は二型花柱性植物ではあまり報告がなく、特にガ媒花的植物においては学術的にも興味深い成果である。そもそも本種の繁殖様式については、雌雄異株と捉えられるなど、その繁殖の実態が正しく理解されていなかった側面がある。送粉様式を含めた繁殖様式の実態解明は、希産地域での本種の保全を進めていく上でも意義のある成果と考える。
すべて 2022 2021 2020 2019
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 4件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) 図書 (2件)
Peer J.
巻: - ページ: 1-17
10.7717/peerj.12318
Thai Journal of Botany
巻: 13 ページ: 47-57
The jouurnal of Japanese Botany
巻: 96 ページ: 253-263
40022735680
Annals of Botany
巻: - 号: 2 ページ: 245-260
10.1093/aob/mcaa072
The Journal of Japanese Botany
巻: 95 ページ: 158-161
東京都立大学小笠原研究年報
巻: 43 ページ: 103-111
40022317635
巻: 95
巻: 125
小笠原研究年報
巻: 43
巻: 94 ページ: 342-353