研究課題/領域番号 |
19K06912
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分46010:神経科学一般関連
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
堀 沙耶香 東京女子医科大学, 看護学部, 講師 (20470122)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2019年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 行動最適化 / C.elegans / シナプス回路 / 行動性差 / tra-1 / 行動選択 / シナプス発生 / 神経回路形成 / 神経生理 / 行動生理 / 生理学 / シナプス / 転写因子 |
研究開始時の研究の概要 |
「行動の最適化」とは、状況に応じて最適な行動を取る生命機能である。中でも、有害な刺激に対する行動最適化は重要で、多くの動物が毒性の強さに応じてさまざまな行動を見せる。しかし、「脳内の1つ1つの神経が、毒性の強さをどのように処理し、行動に繋げているのか?」は重要な課題であるが、その研究は不十分である。 そこで本研究では、逃避行動最適化を研究の対象とし、中枢神経(脳)の1つ1つの神経が、刺激に対してどのように振る舞い、行動に作用するのかを解析する。
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研究実績の概要 |
行動最適化は、動物が環境や状況に応じて適した行動をとる機能である。中でも、身体の損傷リスクが高い有害刺激は命の危機に直結し、刺激の強さによって行動を適切に変えることが重要である。本研究は、この重要な生存戦略である「逃げる行動」の神経回路・動作基盤を知ることを目的とする。「1つの神経で、刺激の強さをどのように受け取り、次の神経に出力するか?」は重要な課題であるが、詳細はまだわかっていない。申請者はこれまでに、全ての神経の繋がりが明確な実験動物である線虫(C.elegans)を用いて、行動最適化の精度を観察する解析系を確立した。当該年度において、野生株の雌雄同体と雄で、逃避行動最適化のパターンが異なることを明らかにし、そのシナプス回路の絞り込みを行なった。C.elegansは、雌雄同体がXX型、雄がXO型の性決定様式をもつ。雄は、通常、性決定因子tra-1 (TRAnsformer)の発現が抑制されており、tra-1機能欠失型変異体(tra-1(If))ではXX型の雄が発生する。本研究では、tra-1(If)変異体のXX型の雄は野生株のXO型の雄と同様の逃避行動パターンであることを示した。性差をもたらす神経回路を同定する目的で、このtra-1(If)変異体に対し、特定の神経でのtra-1レスキュー実験を行い、現在、2種類の神経のいずれかが原因であることを絞り込んだ。C.elegansでは、全シナプスの性差がすでに記載されている。行動性差の神経が同定できれば、シナプス回路もおのずと明らかになると期待される。本研究が目的とする、行動の最適化を担う「1つの神経」における、「シナプス」の機能を網羅的に解析した例はない。情報の入出力の全体像を理解しようとする試みは画期的であり、行動性差のシナプス機序についての最新の知見が得られると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年に、unc-130遺伝子のシナプス回路形成に及ぼす影響についての学術論文を発表した。本年度は、性差の観点から逃避行動最適化のシナプス回路のしくみを明らかにするもので、研究をより一層発展させることができた。行動性差の原因神経も2種類まで絞り込めており、実施期間延長内に結論が出るものと期待される。
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今後の研究の推進方策 |
行動性差の原因神経を同定し、シナプス回路の解明を行う。これまでに解析してきた、逃避行動最適化回路の形成に必要な遺伝子:lin-32、unc-130、inx-1、fax-1、nca-2と行動性差との関わりの有無を解析することで、より詳細なシナプスの役割に迫りたい。成果は、結果が出揃い次第、学会発表や論文として国内外に広く公開していきたい。
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